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『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』調査報道映画指折りの傑作が描く、#MeTooのトリガー

(c)Photofest / Getty Images

『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』調査報道映画指折りの傑作が描く、#MeTooのトリガー

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興行面の失敗は#MeTooの衰退を象徴しているか?



 完成した映画が全米公開されたのは2022年11月。ニューヨーク・タイムズの最初の報道から5年、「SHE SAID」の出版から3年後というタイミングが早かったか遅かったのかは意見が分かれるところだろう。『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』は批評家筋の評価は高かったものの、興行的には振るわなかった。いや、有り体に言って大コケした。全米の興行収入は582万ドル。世界全体では1,393万ドル。3,200万ドルとされる製作費の半分も回収できなかった。ザ・ハリウッドリポーターは「2,000スクリーン以上で公開された映画の中で史上最低のオープニング成績」と報じた。


 興行的失敗の原因を特定するのは容易ではないし、「ヒットしない=駄作」なわけでもないのだが、興行成績の惨敗については「世の中の#MeToo疲れ」が指摘されたり「一般の人々は映画人の期待に反してハリウッドに興味がない」と言われたりもした。映画賞には数多くノミネートされたが、賞レースを席巻することはできず、アカデミー賞からは完全に無視されてしまった。



『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(c)Photofest / Getty Images


 ローナン・ファローの「キャッチ・アンド・キル」は、ファロー自身によってポッドキャスト化された後、HBOでファローがホストを務める同名のドキュメンタリーシリーズも製作された。しかしこれも大きな反響を呼ぶことはなく、いまだに劇映画化はされていない。


 しかし『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』に関して言えば、長いスパンで語り継がれるべき時代性を備えており、流行に左右されない普遍性がある。タイミングを逸したとしても、作品そのものの価値が損なわれるわけではない。また「調査報道映画」というジャンルにおいても指折りの傑作だと思っているのだが、あとは作品を観た人それぞれに判断していただくしかあるまい。



文:村山章

1971年生まれ。雑誌、新聞、映画サイトなどに記事を執筆。配信系作品のレビューサイト「ShortCuts」代表。



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