2024.03.05
『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』あらすじ
2017年、ニューヨーク・タイムズ紙に衝撃のスクープが掲載された。のちに”性犯罪告発運動”#Me Too運動を爆発させたハーヴェイ・ワインスタイン事件。取材を進める中で、ワインスタインは過去に何度も記事をもみ消してきたことが判明する。さらに、被害にあった女性たちは示談に応じており、証言すれば訴えられるため、声をあげられないままでいた。問題の本質は業界の隠蔽構造だと知った記者たちは、調査を妨害されながらも信念を曲げず、証言を決意した勇気ある女性たちと共に突き進む。そして、遂に数十年にわたる沈黙が破られ、真実が明らかになっていくー。
Index
- ”その名を暴く”のではなく、著名な人物を表舞台に引きずり出す物語
- 名もなき被害者たちの声を拾った2人の女性記者
- ワインスタイン事件の顛末を描いた2冊のベストセラー
- 地道な調査報道を丹念に描く真摯なアプローチ
- 名優サマンサ・モートンの凄みとラストの切れ味
- 興行面の失敗は#MeTooの衰退を象徴しているか?
”その名を暴く”のではなく、著名な人物を表舞台に引きずり出す物語
のっけから文句を言うようで恐縮だが、『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(22)のタイトルは、作品を正しく表してはいない。おそらく原作の邦訳本に付けられた書名「その名を暴け #MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い」(新潮社刊、英語題は『SHE SAID』)にならったのだろう。しかし本作は「誰かの名前を暴く」話じゃない。「最初から名前がわかっている著名な人物を、表舞台に引きずり出す」実話なのだ。
その人物とはハリウッドの超大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインであり、現在、有罪判決を受けて収監されていることは多くの人の記憶にも残っているはず。そしてこの映画は、#MeToo運動の起爆剤となったワインスタインの性犯罪報道を担当したニューヨーク・タイムズ紙の記者、ジョディ・カンターとミーガン・トゥーイーによるノンフィクション本がベースになっている。
『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』予告
ワインスタインの性暴力について調べていたカンターとトゥーイーの最初の告発記事が掲載されたのが2017年10月5日。その5日後には、ニューヨーカー誌もジャーナリストのローナン・ファローによるワインスタインの告発記事を掲載する。これを契機に警察も捜査に乗り出し、2018年5月にワインスタインは正式に起訴され、2020年3月に禁錮23年の判決が言い渡されている(後に16年の刑期が追加された)。