サンダーボルツはくせ者ぞろい
「私はどこかおかしい。すっかり空っぽで、姉が死んだせいだと思っていたけど……」
幼少期からロシアのスパイ機関で残酷な訓練を受け、暗殺者になったエレーナ・ベロワは、いまや抜け殻のようになっていた。家族同然、姉として慕ってきたブラック・ウィドウ/ナターシャ・ロマノフは、人類の半分を消滅させた宇宙からの脅威・サノスとの戦いのなかで命を落とした。喪失感を拭えないまま、生きがいもなく、淡々と仕事をこなすだけの毎日だ。淡々と撃ち、淡々と殴り、淡々と殺している。
現在、エレーナに指示を下しているのはCIA長官の“ヴァル”ことヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌ。大手サイエンス企業・OXEグループの元会長であるヴァルは、汚職疑惑の調査を逃れるべく、闇の任務をエレーナに命じていた。引退を申し出たエレーナは、最後にひとつの仕事を頼まれる。巨大な資産庫に隠した証拠が狙われている、盗まれる前に相手を殺せ、と。
『サンダーボルツ*』(c)2025 MARVEL
簡単な任務なはずだったが、そこに予想外の人々が現れた。2代目キャプテン・アメリカとなったが、プレッシャーのあまり自分をコントロールできず、公衆の面前で殺人に及びすべてを失ったUSエージェント/ジョン・ウォーカー。幼い頃に量子実験の事故に巻き込まれ、身体を透明化してあらゆる物質をすり抜ける能力を得たゴースト/エイヴァ・スター。そして、エレーナと同じスパイ機関で訓練を受けたタスクマスター/アントニア・ドレイコフ。彼女たちはみな、エレーナと同じく「標的を殺せ」との指示を受けていたのだ。
とまどう4人の前に、パジャマ姿の気弱な青年ボブが現れた。とある臨床実験に参加していたものの、採血を受けたあとの記憶がまったくないという。いかにも無力そうな出で立ちでネガティブな発言を繰り返すボブに苛立つジョンと、彼を守ろうとするエレーナ。ところが一同は、すぐに自分たちが大きな危機に晒されていることを悟る。
その頃、ソ連が生んだ超人兵士であり、エレーナの父親がわりのレッド・ガーディアン/アレクセイ・ショスタコフは、ひょんなことから事態の真相を知ってエレーナの救出に向かっていた。さらに、今では新人議員となったウィンター・ソルジャー/バッキー・バーンズも、ヴァルの秘密を暴くためひそかに動き出す。
もはやアベンジャーズはいない。では、この世界を襲う脅威をいったい誰が倒すのか。