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『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』マーベル屈指の家族劇、とことん「芝居」で魅せるMCUの新時代

© 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.

『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』マーベル屈指の家族劇、とことん「芝居」で魅せるMCUの新時代

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MCU屈指のファミリー・ドラマとして



 スーパーヒーロー映画が隆盛をむかえた今、多くの作品が直面するのが、「新たなスーパーヒーローの誕生物語(オリジン・ストーリー)を描くかどうか」だ。


 MCUの場合、その実験は、一風変わった構成の『キャプテン・マーベル』(19)から始まった。ドラマシリーズでヒーローのオリジンを描いてから映画に登場させた『マーベルズ』(23)や『サンダーボルツ*』(25)、複数の作品で実質的にオリジンを描いた『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』(25)、振り返ってみれば3部作まるごとオリジン・ストーリーだった『スパイダーマン』シリーズなどがある。


 待望のMCU初登場となったファンタスティック4は――過去に映画化された歴史もあるためだろう、やはりシンプルにオリジンを描くことにはならなかった。


 物語は、彼らがスーパーヒーローとしての“4”周年を迎えたところから始まる。宇宙探査の任務中に宇宙嵐に遭遇した4人は、DNAの変異のためスーパーパワーを身に宿して地球に帰還。以来、地球の平和を守るために数々の脅威と戦い続けており、その人気と活躍ぶりはテレビ番組で特集が組まれるほどだ。


 この世界(アース828)にはファンタスティック4しか巨悪と戦う存在がいない。これまでのMCUで描かれてきた世界(神聖時間軸=アース616)とは異なる時間軸が舞台だから、ここでは彼らこそが唯一無二のスーパーヒーロー=スーパースターなのである。



『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』© 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.


 しかし、どんなスーパースターにも私生活はある。映画の冒頭を飾るのは、リードが探し物をしているところ、スーの妊娠が思いがけず判明するシーンだ。「2年間ずっとダメだったじゃないか、もう子どもの話もしていなかったのに」「私もできなくてもいいと思ってた」――コミック映画の開幕としては、あまりにも率直でリアルなやり取りではないか。


 本作はとことん家族のドラマだ。『アントマン』シリーズが「等身大のファミリー・コメディ」としての方向性からだんだん逸脱し、『ブラックパンサー』シリーズが王国をめぐる血統と政治の物語として洗練されていったなかで、ここに凝縮されているのは夫婦・兄弟・親子・親友という、必ずしも血縁や契約だけによらない、さまざまな“家族”のかたちだ。


 宇宙最凶の脅威ギャラクタスの使者シルバーサーファーが地球に現れ、ギャラクタスが地球を喰いにやってくると宣告しても、家族劇としての枠組みは変わらない。ギャラクタスが地球を見逃すかわりに要求するのは、ほかならぬ彼らの“家族”だからだ。


 人類を救うのか、それとも家族を救うのか。スーパーヒーローとしての責任か、それともひとりの人間としての責任か。『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』は、このテーマが立ち上がってきたときにその真価を発揮する。





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