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『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』マーベル屈指の家族劇、とことん「芝居」で魅せるMCUの新時代

© 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.

『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』マーベル屈指の家族劇、とことん「芝居」で魅せるMCUの新時代

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俳優たちが魅せる映画のおもしろさ



 全員が今回初登場のスーパーヒーロー、しかもオリジン・ストーリーを大胆に省略しながら彼らの家族関係を映画の核心とする。冷静に考えると無謀なチャレンジだが、これを地に足のついたものとして具現化したのが俳優陣の充実した演技だ。


 リード&スーの夫婦だけでなく、スーの弟ジョニーは快活で伸びやかな性格(神経質な一面も垣間見える)、親友ベンは誰よりも穏やかで料理や世話が大好き。わずかなやり取りで彼らの微笑ましい関係をすぐにつかめるのは、役者4人のきめ細やかな演技がなせるところが大きい。


 4年前、彼らが宇宙探査に踏み出した回想シーンや、スーパーヒーローとしての活躍を回想するモンタージュでも芝居の密度は高い。本作がスーパーヒーロー映画として特殊なのは、巨大なテーマでも、丁寧に練り上げられたプロットでも、目を見張るアクションそのものでもなく、家族としてのファンタスティック4の時間と、それらを体現する芝居がもっとも魅力的な作品になっているからだ。



『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』© 2025 20th Century Studios / © and ™ 2025 MARVEL.


 リード役のペドロ・パスカル、スー役のヴァネッサ・カービー、ジョニー役のジョセフ・クイン、ベン役のエボン・モス=バクラックは、日本での知名度こそ高くはないかもしれないが、いまやハリウッドの映画・テレビシリーズを強力に牽引する人気俳優たち。シルバーサーファー役のジュリア・ガーナーも含め、映画を観ていると、「この繊細さを描くためにこのキャストが必要だったのか」と得心する瞬間がある。


 まもなく父親になるリードは、生まれてくる子どもが自分たちのDNA変異を受け継いでいるのではないかと恐れている。その恐怖から目をそらすため、家族の仕事ではなく科学者=ヒーローとしての仕事に向かっていることをスーは知っている。かたや、ジョニーはリードに少し複雑な思いを抱え、ベンは粛々と子どもの誕生にそなえている。


 さらにギャラクタスの狙いが明らかになるや、家族の間にかすかな亀裂が走る。家族がいるからこそ、彼らはなかなか世界を救うことができず、それゆえ世間の不信を招いてしまうからだ。そのときの4人の立ちふるまいも、やはり少しずつ違っている。


 ひとつの家族とはいえ、現実との向き合い方はそれぞれ異なる。しかしながら、彼らはみな一生懸命に、知恵と力を振り絞りながら目の前の課題に向き合おうとしている。そのことを、美術も含めた“生活”の細かなディテールから丁寧に立ち上げるところが本作の美点だ。





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