2025.08.18
P・W・S・アンダーソンがもたらしたSFオタク愛
『エイリアンVSプレデター』はタイトルどおり、そんな両者を激突させるというコンセプトから生まれた。コンセプト自体は映画よりはるか前、1989年に発刊された米ダークホース社のコミックですでに実現しており、一時は映画化も検討されたが、コミックを忠実になぞるストーリーはスタジオを満足させるに至らなかった。
そこに名乗りを上げたのが、『バイオハザード』シリーズで知られるポール・W・S・アンダーソン監督。大のSFファンである彼は、コミックの登場人物のひとりで、プレデターに戦士として認められた人間の日本人女性マチコ・ノグチを主人公にした企画を売り込んでいた。これも実現には至らなかったが、アイデアの面白さを買われたアンダーソンは、その要素を生かしながら『AVP』のストーリー開発を任される。
『エイリアンVSプレデター』(c)Photofest / Getty Images
アンダーソンが注目したのは、まず『プレデター2』(90)で描かれたプレデターの宇宙船内に、エイリアンの死骸が陳列されていたこと。同作の製作陣にしてみればジョーク的な要素ではあったが、アンダーソンは、なぜそれがスペースシップにあったのかを真剣に突き詰めた。獰猛なエイリアンを狩ることは、プレデター社会では一人前として認められることなのではないか?
さらにアンダーソンは、異星人が人類に文明をもたらしたというSF作家エーリッヒ・フォン・デニケンの説を取り込む。太古の昔、地球に降りてきたプレデターは、ピラミッドの建造技術をはじめ多くの文明を古代の人間に伝授した……という設定にそれが表われた。また、アンダーソンはH・P・ラヴクラフトのSF古典小説「狂気の山脈にて」の要素に注目し、探検隊が南極で未知生命体に遭遇するという要素を取り込んだ。そう、舞台は南極のブーヴェ島。すなわち、地上に存在するエイリアンの姿が、映画で初めて描かれることになった。