1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ブラックバッグ
  4. 『ブラックバッグ』エリート諜報員が立ち向かう、世界と個人の危機
『ブラックバッグ』エリート諜報員が立ち向かう、世界と個人の危機

© 2025 Focus Features, LLC. All Rights Reserved.

『ブラックバッグ』エリート諜報員が立ち向かう、世界と個人の危機

PAGES


都合の良い言葉“ブラッグバッグ”



 タイトルの「ブラックバッグ」とは、“極秘任務”のこと。本作においてそれは、スパイの仕事として描かれると同時に、パートナーとの関係の不確かさの象徴ともなる。劇中でクラリサが愚痴るように、そもそもNCSCのように機密性が非常に高い組織で働く職員というのは、外部の人間に話せることは限られ、恋愛関係を作りづらいという事情があるのだ。急な出張があっても、どこに行くのか、誰と一緒にいるのかをパートナーに何も話すことができない。そういう間柄では、なかなか信頼を維持することは難しいだろう。


 なので必然的に、同じ組織からパートナーを見つけようとする。しかし職員はそれぞれ担当する案件を抱えていて、組織内ですらその情報を共有することはできない場合がある。「それは、“ブラックバッグ”」と言われてしまえば、自分も同じ立場であるからこそ、それ以上何も聞くことはできないはずだ。そして、逆にそんな立場を利用して浮気、不倫に及ぶ職員も少なくない。ゆえに必然として互いの疑惑が高まっていくのだ。クラリサが、“どうやってキャスリンと愛し合える関係を作れたのか”というジョージへの質問には、切実なものがある。



『ブラックバッグ』© 2025 Focus Features, LLC. All Rights Reserved.


 コープは、かつて『ミッション・インポッシブル』のリサーチのため、本職の諜報員に非公式にインタビューをしたのだという。そこでコープの心をとらえたのが、ある女性の発言。彼女は、「仕事のせいで男女関係を維持できない」、「どうとでも嘘をつくことができるのに、どうすれば真実が分かるのか」と語ったのだ。スパイといえば、日常的に嘘をつくことが仕事だといえる。そんなスパイ同士の恋愛、そして結婚生活とは、どんなものであるのか。本作『ブラックバッグ』は、世界に危機が迫るのと同時に、そんな個人の危機をも描いていくのだ。


 だが、夫婦生活を羨まれるジョージもまた、妻のキャスリンを疑わねばならない。そこに上司のアーサー(ピアース・ブロスナン)も登場し、怪しい雰囲気を醸し出す。ターゲットが絞りきれないなか、刻々とタイムリミットが迫ってくる。「セヴェルス」と呼ばれる破壊プログラムが敵国や犯罪組織などに渡れば、英国自体を揺るがしかねない。ジョージは、衛星偵察システムや嘘発見器などを利用し、事件の真相へと近づいていく。





PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ブラックバッグ
  4. 『ブラックバッグ』エリート諜報員が立ち向かう、世界と個人の危機