恐ろしいはずの殺人ゲームショーだが、なぜかユルい!?
この概要だけでも近未来のディストピア感が伝わると思うが、序盤ではより深く描かれる。ベンのように当局に都合の悪いことで投獄された者もいるし、反政府運動に加担した者は容赦なく重罪人として逮捕される。証拠の捏造は当たり前の不正な社会。一方で、「ランニング・マン」という重罪人ハンティングの殺人ショーに人々は熱狂している。スタジオの観覧者も視聴者も“殺せ!殺せ!”の大合唱なのだから世も末だ。ともかく、この未来描写はブラックユーモアに満ちている。
その「ランニング・マン」のルールはこうだ。ランナーは丸腰の状態で外に放り出され、3時間でゴールにたどり着けば勝利となり、賞金を手にして無罪放免される。一方のストーカーはスタジオの観覧者によってひとりが選ばれ、火炎放射器や電磁波装置などの武器を駆使して、正義の名のもとに処刑にあたる。ほとんどのランナーはストーカーに狩られる運命にあり、ゴールにたどり着く者は稀だ。

『バトルランナー』(c)Photofest / Getty Images
番組を仕切るのは人気の司会者デーモン・キリアン。みずから番組をプロデュースし、軽快な話術で視聴者を煽っては番組を盛り上げる。彼がスタジオに現われただけで観覧者は熱狂。しかし番組最大のスターは個性のとんがったストーカーたちだ。いかにもお金持ちそうなおばあちゃんたちが、推しのストーカーに声援をおくる姿に、つい吹き出してしまった。
このストーカーは映画内で何人か出てくるが個性がいびつでこれまた笑ってしまう。いかにもタフそうな体型でレオタードを着ていたりなど、コスチューム面も味だ。なかでも筆者のお気に入りは、ぶんぶく茶釜のたぬきのような装いで、茶釜にあたるボディの部分に電飾を施したダイナモと呼ばれるストーカー。シュワルツェネッガーに“クリスマスツリー”と呼ばれるビジュアルもさることながら、オペラを高らかに歌いながら襲撃してくる濃ゆさに笑ってしまった。ちなみに演じるアーランド・ヴァン・リドスは本物のオペラ歌手で、本作の公開を待たずに世を去っている。