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『地球爆破作戦』70年代で予言されていた、AIによる“シンギュラリティの悪夢” (前編)

(c)Photofest / Getty Images

『地球爆破作戦』70年代で予言されていた、AIによる“シンギュラリティの悪夢” (前編)

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AIを扱った映画のリスト



 これまでも、AI(もしくはフィジカルAIを組み込んだロボット)をテーマとする映画は、数多く制作されている。その中でも代表的な作品(*2)を挙げてみたい。



機械人間 感覚の喪失』(Gibel sensatsii, 35)


 ウクライナの作家ヴラジーミル・ヴラドコによるSF小説「Zheleznyy bunt」(鉄の暴動, 31)を、ゲオルギー・グレブナーが脚本化し、アレクサンドル・アンドリエフスキーが監督を務めたソ連映画。高性能なロボットに職を奪われる工場労働者たちの恐怖心と、彼らの氾濫をストレートに表現した作品。また、純粋にロボットがもたらすユートピアを求める研究者に対し、無人兵器への応用を画策する軍部という構図も描かれる。これはまさしく、現在のAI脅威論を予見した先駆け的作品だ。(パブリックドメイン)



『Gog』(54)


 冷戦下の米国、砂漠の地下施設では、人工冬眠や太陽熱を利用した指向性エネルギー兵器、音波兵器など、多岐にわたる極秘研究が進められていた。施設全体は自律型スーパーコンピューターNOVACと、遠隔制御ロボットGOG/MAGOGによって管理されている。ある日、女性研究員が不可解な死を遂げ、やがてNOVACは人類への反逆を企て、ロボットを使って研究員の抹殺を開始する。


 宇宙開発競争と軍事科学の肥大化、そして暴走したAIによる支配という構図は、『地球爆破作戦』とも通底するテーマだ。また、現代のパナマやニカラグアで語られる“音波兵器疑惑”と同様に、本作は「見えない攻撃」への恐怖を物語の核に据えている。さらに低予算作品でありながら、非人間型ロボットをメカニカルな仕掛けで丁寧に造形している点も特筆すべきだ。



『2001年宇宙の旅』(68)


 木星探査船ディスカバリー号には、高性能AI「HAL 9000」が搭載されている。しかし任務の途中からHALは不可解な判断を下し、船外活動中のプール隊員、さらに人工冬眠中の科学者たちを死に追いやってしまう。生き残ったボーマン船長はHALの回路を停止させようとするが、その過程で“HALだけが知っていた”木星ミッションの真の目的に触れることになる。


 本作は、AIが“論理の矛盾”に直面したとき何が起こるのかを、初めて本格的に描いた映画だ。HALの暴走は単なる狂気ではなく、与えられた指令同士の矛盾が引き起こした“倫理的ジレンマ”として提示されている。この背景は続編『2010年』(84)でより明確に説明され、HALの行動が“論理学ベースのAIが抱える根源的な問題”として位置づけられる。



『ブレードランナー』(82)


 AI研究の文脈で見ると、この作品は「身体性」「記憶」「人間との境界」という三つのテーマを決定的に提示した、いわばバイブル的存在である。AIを哲学的に考えると、必ず直面するのが「シンボルグラウンディング問題」だ。AIは“馬”という単語(シンボル)を知っていても、実際の馬を見て「これが馬だ」と結びつけることが苦手である。言葉と世界の経験をどう接続するかという問題だ。


 『ブレードランナー』のレプリカントは、この難題に対して独自の回答を示す。彼らは“植え付けられた記憶”を通じて、自分の存在を世界に結びつけ、アイデンティティを獲得している。つまり、人工的な記憶が“世界との接点”として機能し、シンボルグラウンディングの代替装置になっているのである。


 さらに、劇中の「ボイト=カンプ・テスト」は、アラン・チューリングが提唱した“チューリング・テスト” の拡張版といえる。言語的な受け答えではなく、「共感」や「情動の揺れ」といった、論理では再現しにくい領域を指標にして“人間性”を測ろうとする試みだ。これは今日のAI倫理でも中心的なテーマであり、AIがどこまで“他者”として扱われうるのかという問いを、映画は早い段階で提示していた。



『ウォー・ゲーム』(83)


 ハッカーの高校生デイビッドが、偶然NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)の軍事用スーパーコンピューター「WOPR」にアクセスし、新作ゲームだと思い込んで「世界全面核戦争」を開始してしまう。しかしWOPRにとってそれは遊びではなく、核戦略をシミュレーションし最適解を導き出すための実行プログラム「ジョシュア」だった。WOPRが現実のミサイル発射に向けてカウントダウンを進める中、デイビッドはジョシュアに「三目並べ」を反復実行させることで、「勝者のいないゲーム(核戦争)はプレイしないことが唯一の正解である」という結論を“学習”させ、世界の破滅を阻止しようとする。


 WOPRは現在のAIのようなニューラルネットワークではないが、人間が理解できない速度で膨大なシミュレーションを回し、そこから“経験則”を抽出する存在として描かれている点が、今日のLLM(大規模言語モデル)や、ディープラーニングのイメージと奇妙に重なる。ティーン向け作品と侮れない、AI時代の到来を早くも予感させた傑作である。



『ターミネーター』(84)


 近未来、米軍が構築した防衛AI「スカイネット」は、自律判断の結果“人類こそ最大の脅威”と結論し、核攻撃を実行して人類を滅亡寸前に追い込む。生き残った人類は抵抗軍を組織し、スカイネットと戦い始める。AIは自らの敗北を防ぐため、過去へ殺人機械ターミネーターを送り込み、抵抗軍の指導者ジョン・コナーの母サラを抹殺しようとする。これは、AIが自己保存のために“時間軸そのものを操作する”という、極めてラディカルな意思決定を描いた作品である。


 監督のジェームズ・キャメロンは『地球爆破作戦』の大ファンであり、実際に『ターミネーター』のヒントにしたと語っている。またオマージュとして、フォービン役のエリック・ブレーデンを、『タイタニック』(97)のジョン・ジェイコブ・アスター4世(実在した大富豪)役に起用している。



『アイ,ロボット』(04)


 主人公スプーナー刑事は、かつて自動車事故で川に転落し、救助に駆けつけたロボットに命を救われた過去を持つ。しかしその事故では、別の車に乗っていた少女も同時に水中に沈んでおり、ロボットは“生存確率の計算”に基づいてスプーナーだけを救助した。スプーナーは「人間なら、たとえ助かる見込みが低くても“未来ある子供”を優先したはずだ」と考え、ロボットを深く憎むようになる。


 物語後半では、マザーコンピューター「VIKI」がロボット三原則を過剰に論理化し、“戦争や環境破壊で自滅へ向かう人類を守るため”に、逆に人類を支配しようとする。


 これらは典型的な「トロッコ問題」の構図であり、AIが“統計的な生存率”に基づいて最適解を選ぶときに生じる、倫理的残酷さを描いたものだ。現在の自動運転車やAI倫理の議論にも直結するテーマであり、『地球爆破作戦』にも共通するものだ。



*2 またこの他に、『禁断の惑星』(56)、『ウエストワールド』(73)、『トロン』シリーズ(82~)、『ショート・サーキット』(86)、『攻殻機動隊』シリーズ(95~)、『アンドリューNDR114』(99)、『マトリックス』シリーズ(99〜)、『A.I.』(01)、『シモーヌ』(02)、『ステルス』(05)、『her/世界でひとつの彼女』(13)、『ザ・マシーン』(13)、『エクス・マキナ』(14)、『トランセンデンス』(14)、『チャッピー』(15)、『ブレードランナー 2049』(17)、『ANON アノン』(18)、『TAU/タウ』(18)、『アップグレード』(18)、『ホンモノの気持ち』(18)、『アイ・アム・マザー』(19)、『AI崩壊』(20)、『ロン 僕のポンコツ・ボット』(21)、『ミッチェル家とマシンの反乱』(21)、『アイの歌声を聴かせて』(21)、『アフター・ヤン』(21)、『M3GAN/ミーガン』(22)、『ザ・クリエイター/創造者』(23)、『けものがいる』(23)、『MERCY/マーシー AI裁判』(26)など、非常に多くの作品が作られてきた。





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