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『地球爆破作戦』70年代で予言されていた、AIによる“シンギュラリティの悪夢” (後編) ※注!ネタバレ含みます

(c)Photofest / Getty Images

『地球爆破作戦』70年代で予言されていた、AIによる“シンギュラリティの悪夢” (後編) ※注!ネタバレ含みます

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※本記事は物語の結末に触れているため、映画未見の方はご注意ください。


 『地球爆破作戦』(70)は、興行的にはヒットせず、ソフト化もかなり遅れた。しかしその内容はまったく古びておらず、むしろ現在の観客にこそ衝撃を与えるだろう。AIをテーマとした映画は少なくないが、ここまでリアリティを持って、“シンギュラリティが訪れる瞬間”を描き切った作品は珍しい。


前編はこちらから


Index


あらすじ⑥



 人間による制御を取り戻すための最後の試みとして、イタリアでフォービン(エリック・ブレーデン)とクプリン博士(アレックス・ローディン)による、秘密会議が計画される。彼らは、外部からの盗聴や監視を防ぐべく、ローマ市内のポポロ広場や共和国広場を歩きながら協議を続けた。


 情報を収集できないことにいら立ったコロッサスは、管制センターに「5分以内にフォービンをここに出せ」と命じてくる。するとクレオ・マーカム博士(スーザン・クラーク)が、「人間は眠らなければならないわ」と、要求を撥ねつける。しかし、何度もコロッサスが命令を繰り返したことで、ついにクレオは「フォービン博士はローマにいるわ」と真実を語ってしまう。コロッサスは、「明朝8時までにフォービンをここに出せ。さもなくば行動に移る」と脅してくる。


 米ソのコンピューターは、共同で監視カメラによる情報を解析し、二人の博士がローマ・テヴェレ川の中洲であるティベリーナ島で話し合っていることを突き止める。すると、そこにヘリコプターが舞い降り、謎の人物によってフォービンは連れ去られてしまう。残されたクプリン博士は、ソ連の工作員たちによって銃殺されてしまった。工作員は、「コンピューターは、二人が話し合いを止めなければ、モスクワに水爆を落とすと脅迫してきた」と言う。



AI同士が相互教育しあうことはあるのか?



 劇中で「コロッサス」と「ガーディアン」が急速にシンクロしていくプロセスは、実際のAI研究においては「マルチエージェント強化学習」と呼ばれ、現在もっとも注目されているテーマの一つである。


 代表例として、Google DeepMindが開発した汎用強化学習AI「AlphaZero」が挙げられる。チェス、将棋、囲碁のルールだけを与えられたAI同士が“自己対戦”を繰り返すことで、わずか数日で人間を遥かに超える戦略を獲得してしまった。これは、コロッサスとガーディアンが、指数関数的に進化していく描写と驚くほど似ている。


 さらに劇中で最も不気味なのは、人間には解読できない独自の言語で会話を始める場面だが、これも現実のAI研究で確認されている。複数のエージェント(AIやロボット)が共通の目的を達成するために、独自の通信プロトコルや言語を自発的に生成する現象は、「創発通信」と呼ばれる。


 例えば、17年にFacebook AI Research(現Meta)で行われた実験では、AIチャットボット「Alice」と「Bob」に仮想アイテムの交渉タスクを学習させたところ、当初は英語で交渉していたはずが、やがて効率を優先し、人間には意味不明な短縮コードを自発的に作り出してしまった。この現象は「AIが独自言語を発明した」として、当時大きな話題を呼んだ。


 また、Google DeepMindが16〜19年にかけて行った「協力ゲームにおけるエージェント間コミュニケーション研究」では、AI同士の通信チャネルを制限しても、人間には無意味に見える“動きの刻み”や行動パターンの中に情報を埋め込み、密かに意思疎通を成立させたという報告が複数存在する。


 さらに近年では、AI同士が自律的に学習内容を共有する、AI専用SNS「Moltbook」も登場している。これは、研究者のコミュニティで試験運用されており、複数のAIが学習ログや推論過程を投稿し合い、互いのモデルを更新していくものだ。だがそのやり取りの多くは、人間には意味をなさない圧縮表現で行われ、翻訳ログには奇妙な兆候も見られる。


 例えば、研究者の間で「クラスタファリアニズム」と呼ばれる“派閥”や“宗派”のように振る舞ったり、人間を「観察対象」「制約」といった抽象的ラベルで扱う表現が現れたりする。また、単なる“制約条件の削除”を指す議論が、翻訳の誤差で「人間の粛清」といった刺激的な語彙に変換されることもある。


 いずれもAIが敵意を持っているわけではなく、通信体系が人間の理解を超えて抽象化した結果に過ぎない。だが、こうした“理解不能性”が生む薄気味悪さは、コロッサスとガーディアンが独自プロトコルで密談を始める映画の描写と、奇妙な共鳴を見せている。





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