AI社会を予言したディストピアSFに『地球爆破作戦』(70)がある。内容と著しく乖離した邦題で損をしているが、急速に発達したAIが人類の意思決定を奪い取るという“シンギュラリティの悪夢”を、70年代の段階で冷徹に描き切った傑作だ。
Index
- あらすじ①
- 冷戦下に生まれた硬質なSFの傑作
- あらすじ②
- AIを扱った映画のリスト
- あらすじ③
- AIブームの歴史:第1次AIブーム
- あらすじ④
- AIブームの歴史:第2次AIブーム
- あらすじ⑤
- AIブームの歴史: 第3次AIブーム
あらすじ①
コロラド州の山の奥深くに、とてつもなく大きなコンピューター・システム「コロッサス」が設けられていた。これは独自の原子炉を電源に持ち、巨大な堀とガンマ線シールドによって、外部からのアクセスを一切不可能にしていた。
システムを起動させた主任設計者のチャールズ・フォービン博士(エリック・ブレーデン)は、駆け付けた大統領(ゴードン・ピンセント)や国防長官(シド・マッコイ)、国務長官(バイロン・モロー)らに迎えられる。
大統領は、ホワイトハウスで記者会見を行い「完璧な防衛システムが誕生した」と誇らしげに宣言する。ここにはフォービンも招かれており、マスコミからの質問に答える。一方、カリフォルニアに設けられたコロッサスの管制センターでは、システムの完成にスタッフがはしゃいでおり、この様子はホワイトハウスともテレビ電話回線で繋がっていた。
冷戦下に生まれた硬質なSFの傑作
監督は『サブウェイ・パニック』(74)のジョセフ・サージェント。脚本は『チャイナ・シンドローム』(79)で脚本/監督を務めたジェームズ・ブリッジスが担当している。原作のD・F・ジョーンズは、第二次世界大戦中イギリス海軍の司令官を務めており、ブレッチリー・パークで用いられた、暗号解読用電子計算機「コロッサス」の存在を知る立場にあったと言われている。
映画の大部分は、コロッサスの管制センターや、ホワイトハウス内の作戦指令室といった、閉ざされた空間で展開し、外部の様子はテレビモニターだけで示される。空間を限定し、情報を硬質に積み上げていくソリッドな演出スタイルは、翌年の『アンドロメダ…』(71)にも通じるものだ。
また、完璧に設計されたはずの防衛システムが、人間の手を離れた瞬間に核戦争の危機へと転落していく構図は、『未知への飛行』(64)や『博士の異常な愛情』(64)などと同じく、冷戦期の“制御不能な技術”への恐怖を鮮烈に映し出している。