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『地球爆破作戦』70年代で予言されていた、AIによる“シンギュラリティの悪夢” (前編)

(c)Photofest / Getty Images

『地球爆破作戦』70年代で予言されていた、AIによる“シンギュラリティの悪夢” (前編)

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あらすじ③



 ガーディアンとリンクしたコロッサスは、両者の共通言語を探るべく、(異星人とのファーストコンタクトのように)「2×1=2」「3×1=3」…といった九九から、ゆっくりと通信を開始した。この様子をCIA長官がからかうが、その速度は次第に増していって、1時間後には微積分、さらに重力に関する新理論や、エディントンの膨張宇宙論などを次々と導き出していく。


 これに対し、最初ガーディアンのモニターは無反応だったが、やがて同様に初等数学から学習し始め、コロッサスと同様に急成長していく。やがてコロッサスはペースを落とし、ガーディアンがシンクロするのを待ち始める。


 そして、ガーディアンの知識がコロッサスに並んだ瞬間、二つのシステムの学習速度は、人間の理解力と速度を遥かに超越し、ついにはモニターに何も表示されなくなる。それは、人間に解読できない、コンピューター独自の通信プロトコルを用いるようになったことを意味していた。



AIブームの歴史:第1次AIブーム



 では現実世界において、AIはどのように進化していったのだろうか。ここでその歴史を振り返ってみたい。


 そもそもAIは約30年周期で流行を繰り返しており、その最初のブームは、43年に米国の神経生理学者ウォーレン・マカロックと、論理学者のウォルター・ピッツが、神経細胞の機能をモデル化した「形式ニューロン」に始まる。これは、あくまでも数学的・論理的な概念上のモデルだったが、ニューロン(神経細胞)の働きを、「0か1か」の論理ゲートとして記述できることを証明した理論研究だった。これによって脳という組織が、数学的に「論理演算」を行っていると示され、AI研究の下地が生まれる。


 50年には英国の哲学雑誌「Mind」に、「Computing Machinery and Intelligence」(計算機械と知能)という論文が掲載される。著者はあのチューリングで、「イミテーション・ゲーム」と称された、「機械は人間を騙して自分を人間だと信じ込ませることができるか?」という客観的なテストが提唱されている。これが今日、チューリング・テストとして知られる概念だ。


 56年には米ダートマス大学で、有名な「ダートマス会議」が開催され、ここで初めて「人工知能(AI)」という用語が提案された。この会議に集まった研究者たちは、「人間の知能の特徴は正確に記述可能であり、それをシミュレートする機械を構築できる」という信念のもと、“記号論理”を用いた知能の解明に挑んだ。


 58年には、米コーネル大学のフランク・ローゼンブラットが、形式ニューロンを基にして、プログラムに学習能力を持たせた“ニューラルネットワーク”の「パーセプトロン」を発表する。そして、パターン認識や自然言語処理の分野で期待が高まり、60年以降熱心に研究され、これが第1次AIブームへと発展していく。『地球爆破作戦』も、この第1次ブームのころに企画されたもので、D・F・ジョーンズによって原作小説「Colossus」が執筆されたのは66年だった。


 しかしこの時代は、コンピューター自体の性能が低過ぎて、まともな計算が行えなかった。そこで、ルールとゴールが厳密に決まっている、特定の問題を解く研究が進められた。例えば、パズルや迷路を解く、チェスを指すなど、一見知的な活動である。しかし具体的なルールが記述しきれず、またゴールが曖昧な現実世界では全く役に立たない。結局“論理”を軸とした最初のAI研究は行き詰まる。(*3)


*3 その、「AIは矛盾した論理に出会うと、うまく働かない」という概念を映画に持ち込んだのが、『2001年宇宙の旅』(及び続編の『2010年』)だ。この『2001年…』には、「ダートマス会議」にも参加していたMITのマービン・ミンスキーも顧問として深く関わっており、「HAL 9000」をリアリティのあるものにするため、ロボット然としたデザインではなく、壁に埋め込まれたカメラの目という、遍在する知能としてのスタイルに変更させるなど、具体的なアドバイスを行っている。





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