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『ウエストワールド』AIを予見しCG技術の黎明となった、マイケル・クライトン長編監督デビュー作(前編)

(c)Photofest / Getty Images

『ウエストワールド』AIを予見しCG技術の黎明となった、マイケル・クライトン長編監督デビュー作(前編)

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『ウエストワールド』(73)は、『ジュラシック・パーク』(93)の原作者であるマイケル・クライトンが、初めて脚本・監督を務めた劇場長編映画だ。「人間そっくりの殺人ロボットがしつこく追いかけてくる」というパターンの原型であり、その後のSF映画に大きな影響を与えた。また、ルー・ショー・プロダクションとMGMテレビ制作の『Beyond Westworld』(80)や、HBOの『ウエストワールド』(16~22)といったドラマシリーズのベースとなった映画でもある。さらに今日の目で観ると、コンピューターウイルスやAIの発達といった状況を予言していたかのようにも感じさせる。


『ウエストワールド』予告


Index


『ウエストワールド』あらすじ①



 冒頭は、近未来の米国における大人向けテーマパーク「デロス」の、インタビュー型CMから始まる。パークから戻ってきた観客たちに、レポーターが感想を聞いていく。古代ローマを再現した「ローマンワールド」、13世紀ヨーロッパの「メディーバルワールド」、そして西部開拓時代の「ウエストワールド」を、それぞれ体験した人々が生々しい感想を興奮気味に語っていく。


 荒涼とした砂漠地帯を疾走する、デロス行き専用のホバークラフト3号機。乗客たちはこれから体験できる世界を心待ちにしている。デロス初体験のピーター・マーティン(リチャード・ベンジャミン)は、初めて銃を扱うことに興奮していた。シカゴで弁護士を営んでいる彼は、離婚の痛手が癒えず、見かねたデロス経験者の友人ジョン・ブレイン(ジェームズ・ブローリン)が誘ったのだ。


 デロスに到着すると、乗客たちは各自が希望する3つのワールドへと別れて行く。ウエストワールドを選んだピーターとジョンは、西部劇のコスチュームに着替え、それぞれに銃も与えられる。驚くことにそれは本物で、観客は殺人のスリルを楽しめることになっていた。


 ピーターとジョンが馬車に乗って町に出て行くと、そこには1880年代の風景(*1)が完璧に再現されていた。建物だけでなく、そこに暮らす住民や馬なども、まったく本物と区別できない精巧なロボットだ。だが、ホテルに入ってベルボーイ(チャールズ・シール)にチップを渡すと、彼の掌には指紋も掌紋もなかった。これが唯一の判別法らしい。


 ピーターたちはバーを訪れる。注文できる酒は、ウイスキー一択だった。すると黒ずくめのガンスリンガー(ユル・ブリンナー)(*2)がやってきて、ピーターに因縁を付けてくる。ピーターはジョンに促されて、男と決闘することとなる。最初は怖気付いていたピーターだったが、あっさり勝ってしまう。生々しく血を流す男の死体は、すみやかに外に運び出された。


 ホテルに戻ったピーターは、「誤って客を撃つことはないのか?」という疑問を口にした。するとジョンは「俺を撃ってみろ」と言う。ピーターが恐る恐る引き金を引くと、弾は出ない。銃には赤外線センサーが内蔵されており、人が出す熱を感知してゲストに発砲できない仕組みになっているのだ。


 ホテルで夕食をとっていると、他の客(ディック・ヴァン・パタン)が「ミス・キャリー(メイジェル・バレット)の酒場が最高だった」と勧めてくる。行ってみると、彼らは娼婦を紹介された。2階へ上がろうとした時、表で銀行強盗が暴れ始め、助けに行こうとするピーターをジョンが止める。真面目一筋で生きてきたピーターは、娼婦を抱くのは初めてだったが、やがて快楽に溺れていく。その間も外では銃声が響き渡っていた。


 満足したピーターとジョンが眠りについたころ、通りには射殺されたロボットの死体が累々と転がっていた。すると複数のトラックがやってきて、死体を回収していく。そして、精密機器工場のようなコントロールセンターに運ばれて行き、修理が始まる。


*1 この映画の製作費はたった125万ドルだった。そのため、新規にセットや衣装を作ることができず、過去のストックを再利用している。西部開拓時代の背景は、主にMGMとワーナーブラザースのバックロット(野外撮影場)が用いられている。なおMGMのバックロットは、撮影終了後に不動産開発業者へ売却された。


*2 ブリンナーのコスチュームは、『荒野の七人』(60)で彼自身が演じたクリス・アダムズをオマージュしたものだ。ブリンナーは50~60年代は大スターだったが、ハリウッドの衰退と共に仕事を失いつつあった。そのため、7万5,000ドルという破格のギャラで出演を引き受けている。




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