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『ウエストワールド』AIを予見しCG技術の黎明となった、マイケル・クライトン長編監督デビュー作(前編)

(c)Photofest / Getty Images

『ウエストワールド』AIを予見しCG技術の黎明となった、マイケル・クライトン長編監督デビュー作(前編)

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脚本・監督を務めたマイケル・クライトン



 クライトンと言えば、原作を務めた『アンドロメダ…』(71)や『ジュラシック・パーク』、『スフィア』(98)、『タイムライン』(03)などといった映画の影響で、SF専門という印象が強い。しかし本人は、それほどSF好きなわけではなかった。


 彼は元々、ハーバード・メディカルスクールの学費を稼ぐため、ジョン・ラングというペンネームで作家活動を開始している。当時は「華麗なる賭け」(66)、「殺人グランプリ」(67)、「ファラオ発掘」(68)、「生存率ゼロ」(69)、「エデンの妙薬」(70)などといった、アクションスリラーが中心で、そのほとんどが邦訳されるなど、それなりに人気作家だった。


 だがジェフリー・ハドソン名義で出版した、妊娠中絶手術をテーマとする「緊急の場合は」(68)で、アメリカ探偵作家クラブのエドガー賞長編賞を受賞する。クライトンは69年に医学博士号を取得してハーバード・メディカルスクールを卒業し、69年から70年まで生物医学系のソーク研究所で研究生として研究を続けていた。さらに本名で出版した「アンドロメダ病原体」(69)(*3)がベストセラーとなり、科学に強い作家というイメージが定着する。


*3 なお、どこまで事実なのか不明だが、クライトンは65年ごろ20世紀フォックスに出入りしていたらしい。このころ東宝から、小松左京原作のSF小説「復活の日」(64)を合作で映画化したいという企画がフォックスに打診されていたそうで、その関係でクライトンもその脚本(あるいは企画書か英訳された原作)を読んでいた可能性があるというのだ。そしてそれが、「アンドロメダ病原体」の元ネタになったという説がある。


『ウエストワールド』あらすじ②



 場面はコントロールセンターの会議室となり、ロボットたちの故障率を表すグラフィックデータが表示されている。主任管理者(アラン・オッペンハイマー)は「ローマンワールドとメディーバルワールドに、この6週間で原因不明の故障やシステム障害が急増し、それがウエストワールドにも波及し始めている。この異常な拡がり方は、生物の感染症に似ている」と感想を述べる。別の管理者が「ロボットが病気に罹るなど有り得ない」と批判すると、主任管理者は「ここで扱っているのは生物と同じぐらい複雑な機械で、コンピューターがデザインした部分も多く、我々はその仕組みすら知らない」と言う。


 朝になって、メンテナンスを済ませたロボットたちが動き始める。ホテルで髭を剃っていたジョンの部屋に、いきなり昨日の黒ずくめのガンスリンガーが銃を構えて入って来た。そのやり取りをドアの外から聞いていたピーターは、ドアを開けるなりガンスリンガーに向かって続けざまに発砲する。ガンスリンガーは2階の窓から転落し、絶命した。


 ピーターは殺人容疑で逮捕され、牢屋に閉じ込められる。ジョンが「あれは正当防衛だ」と主張しても、保安官(テリー・ウィルソン)は聞く耳を持ってくれない。ジョンは通りにいた娘に頼み、ピーターの昼食を運ばせる。だがその中には、ダイナマイトが忍ばせてあった。そしてピーターが壁を爆破して脱獄すると、ジョンが保安官を撃ち殺して馬で逃走する。




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