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『ウエストワールド』AIを予見しCG技術の黎明となった、マイケル・クライトン長編監督デビュー作(前編)

(c)Photofest / Getty Images

『ウエストワールド』AIを予見しCG技術の黎明となった、マイケル・クライトン長編監督デビュー作(前編)

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クライトンの物語の特徴



 クライトンの書くストーリーは、古典的(ベタな)設定に、ホットな科学トピックを組み合わせるというものだ。映画化された作品を例に出すなら、


ディスクロージャー』(94)

企業におけるセクハラ/パワハラ + バーチャルリアリティ


コンゴ』(95)

20~50年代に盛んに作られた秘境冒険映画 + 手話のできるゴリラなど最新霊長類学


タイムライン』(03)

中世を舞台とした剣劇 + 量子力学の多世界解釈や量子コンピューター


などといった具合だ。最新の科学トピックに関しては、専門領域である医学系を除けば、割と普通に入手可能な科学雑誌から得ているのだろう(日本で言えば「日経サイエンス」などの購読者なら思いつく程度の発想だ)。そしてテーマが決定したなら、そこから専門的な研究所や企業を訪問し、具体的なディテールの取材が行われる(筆者がかつて勤めていた富士通にも取材で来ていたことがあった)。


 『ウエストワールド』に関しては、クライトンがディズニーランドに遊びに行った際、「カリブの海賊(パイレーツ・オブ・カリビアン)」のオーディオアニマトロニクスに感銘を受け、「これがもっと精巧になって人を襲い始めたら」と発想したのが、きっかけだったそうだ(そして今回も、研究所や企業を訪問しているのだが、その具体的内容は後編で述べる)。そして「デロス」の設定は、映画の黎明期から黄金期に量産された、古代ローマ史劇、中世ヨーロッパの剣劇、西部劇といった、ベタ中のベタな題材が選ばれている。


『ウエストワールド』あらすじ④



 一方、町に戻っていたピーターとジョンは、ミス・キャリーの酒場から出て来た。昨晩はここで大乱闘が繰り広げられ、二人は浴びるように酒を飲んでいたため、二日酔いでフラフラである。すると二人を待ち構えていたのが、あの黒ずくめのガンスリンガーだ。ピーターは「もう飽きた」と決闘を拒否し、代わってジョンが相手をする。しかし彼は、あっさり撃ち殺されてしまった。怯えたピーターは馬で逃亡する。


 そのころローマンワールド(*5)でも、大殺略が繰り広げられ、観客たちが次々と惨殺されていった。完全に制御を失った管理者たちは、その様子をモニターで見ているだけしか出来ない。そして彼らも、コントロールセンターのドアが閉鎖されたことで、窒息死の危険が迫っていた。


*5 ローマンワールドのロケは、チャップリンやキートンと並ぶサイレント時代のコメディスターだった、ハロルド・ロイドの邸宅の庭園で行われた。ここは『コマンドー』(85)のロケにも用いられている。



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