軍事・政治とAIの関係
AIの歴史を振り返ると、その発展は常に軍事研究と密接に結びついてきた。第二次世界大戦中の暗号解読機「ボンバ」や「コロッサス」、ARPA/DARPAが主導した初期AI研究、さらにはインターネットの原型であるARPANETまで、いずれも軍事的要請から生まれた技術である。AIは“民生技術”として語られることが多いが、その根底には常に国家安全保障の影がある。
現代においても状況は変わらない。自律航行ドローン、画像認識による標的識別、サイバー攻撃の自動化など、AIはすでに戦争の様相そのものを変えつつある。特に議論を呼んでいるのが、攻撃判断の一部をAIに委ねる「自律型兵器システム」であり、国際社会では規制の是非が激しく争われている。
ここで問題となるのは、AIが“暴走する”ことではなく、人間がその判断過程を理解できないまま、結果だけを受け取る構造が生まれてしまう点だ。さらにAIは、軍事だけでなく政治の領域にも深く入り込みつつある。SNSのレコメンドアルゴリズムは世論形成に影響を与え、ボットによる情報操作は選挙戦略の一部となり、国家間の情報戦はAIによって加速している。つまり、AIは「政治を乗っ取る」のではなく、政治の前提条件そのものを変質させてしまうのである。
現在の目から見ると、『地球爆破作戦』が描いているのは、AIが人類を支配する物語ではない。むしろ、政治的混乱と相互不信の中で、人間が自ら主導権を手放していく構造を、冷徹に描いた作品と言えるだろう。コロッサスが力を握ったのは、AIが強大だったからではなく、米ソ双方が互いを信用できず、判断を機械に委ねたからである。
現代のAIをめぐる軍事・政治の状況を見ると、この構図は決してフィクションの中だけの話ではない。AIが危険なのではなく、AIを扱う人間の側が、複雑化した世界を統治しきれなくなりつつある。その冷たい現実を、『地球爆破作戦』は半世紀以上前にすでに描いていたのだ。
1980年より日本エフェクトセンターのオプチカル合成技師。1982年に日本初のCGプロダクションJCGLのディレクター。EXPO'90富士通パビリオンのIMAXドーム3D映像『ユニバース2~太陽の響~』のヘッドデザイナーなどを経て、フリーの映像クリエーター。NHKスペシャル『生命・40億年はるかな旅』(94)でエミー賞受賞。VFX、CG、3D映画、アートアニメ、展示映像などを専門とする映像ジャーナリストでもあり、映画雑誌、劇場パンフ、WEBなどに多数寄稿。プロ向け機関紙「映画テレビ技術」で長期連載中。東京藝大大学院アニメーション専攻、日本電子専門学校などで非常勤講師。主要著書として、「3D世紀 -驚異! 立体映画の100年と映像新世紀-」ボーンデジタル、「裸眼3Dグラフィクス」朝倉書店、「コンピュータ・グラフィックスの歴史 3DCGというイマジネーション」フィルムアート社
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