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『ラストデイズ』ガス・ヴァン・サントが描く、カート・コバーン最後の数日間に想を得た架空の物語

(c)Photofest / Getty Images

『ラストデイズ』ガス・ヴァン・サントが描く、カート・コバーン最後の数日間に想を得た架空の物語

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カート・コバーン最後の数日間に想を得た架空の物語



 マイケル・ピット演じる主人公「ブレイク」のモデルとなっているのが、ロック界の巨星カート・コバーンであることは、当時の広告だけではなく、本作の字幕でも示唆されている。カート・コバーンは、1990年代初頭に、「グランジ・ロック」と呼ばれることになるスタイルの象徴となった、アメリカのロックバンド「ニルヴァーナ」のフロントマン。1991年のアルバム「ネヴァーマインド」で一躍世界的成功を収めるなど、時代を代表し、また時代を超えた存在として、いまでも広く支持されている。そんな彼は、人気絶頂にあった1994年に自ら命を絶ったのである。


 本作は、彼に似せた架空の世界的ロックミュージシャン、“ブレイク”の最期に焦点を当てた内容となっているが、「この映画はカート・コバーンの最後の数日間に想を得た架空の物語だ」という字幕が示しているように、あくまで彼に起こった現実の出来事や精神状態を再現しようとしたわけではないことを主張してもいる。映画がこういったバランスになったのには、複雑な事情がある。



『ラストデイズ』(c)Photofest / Getty Images


 まず、社会的影響力の強い実在の人物が命を絶ち、それほど年月の経っていなかった状況下において、それを題材にした映画作品を制作し公開することは、きわめてセンシティブな活動だといえる。常識的に考えれば、遺族の感情を害することになることは明らかであり、ファンからの反発も、当然あり得るはずだ。


 サント監督がカート・コバーンと出会ったのは、1992年のオレゴン州ポートランドだった。サント監督はそこで、性的少数者の権利をうったえるイベントに参加していた。同問題に関心の強いカートもまた、現地で自身のバンドとともにチャリティーコンサートをおこなっていた。それまでサント監督はロック音楽にあまり興味を持っていなかったが、ディナーパーティーの席で、陽気な面を持ちながらも物静かで内向的な雰囲気を持った彼に強い印象を与えられた。


 カートの死後、親しみからか、もしくは差別に抵抗する同志としての心情からか、サント監督は、彼を題材とした映画の製作に熱意を傾けることとなる。ここでのスターの死は、サント監督の過去作『マイ・プライベート・アイダホ』(91)の主演俳優であり、将来を嘱望されていたリヴァー・フェニックスの突然の死にも重ねられているとするのは、考え過ぎだろうか。




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