製作までのいきさつ
この本の映画の話を持ち込まれた時、クロエ・ジャオは断ったという。「Deadline Hollywood」の動画のインタビューの中で製作のプロセスをジャオはこう語っている。
「企画が持ちかけられた時、とてもできないと思いました。自分が語るべき物語に思えなかったんです。私自身は子供のいる母親ではないので、子どもを失う母親の話は語れないと感じました。母親像を掘り下げていくのは、すごく神経を使う作業に思えました」
ただ、答えは「ノー」だったものの、何かひっかかるところもあった。その後、ある映画祭でアイルランド出身のポール・メスカルと話をする機会があった。彼の主演作『aftersun/アフターサン』(22)が出品されていたからだ。そして、話をしていて、若き日のシェイクスピアを演じるのに、ふさわしい俳優に思えたという。

『ハムネット』©2025 FOCUS FEATURES LLC.
「メスカルが原作本のことを教えてくれました。すごくいい本で、あなたが深めたいと思えるテーマが入っていると思う、と彼に勧められたんです」
こうして原作本を読んだ後、ジャオは映画化を考え始めたが、アグネスを演じる俳優がいないと映画化もできないと考えた。そこで浮上したのがジェシー・バックリーだった。
「ジェシーが出演を受けてくれて、やっと、私は企画に参加します。と正式に返事をしたんです」
そして、ジャオは原作者のオファーレルの参加も希望し、彼女も共同脚色を担当した。
「あなたが参加してくれなければ、私はこの映画を作る気がない、と彼女に伝えました。私は彼女自身が作り上げた世界に入らなくてはいけなかった。歴史ではなく、フィクションとして構成された歴史がそこでは取り上げられていたのです」とジャオは語っている。