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監督vsプロデューサー『スーパーマン』の撮影現場では何が起きていたのか?

監督vsプロデューサー『スーパーマン』の撮影現場では何が起きていたのか?


誰が『スーパーマン』を監督するのか?



 次に監督選びが始まった。イリヤ・サルキンドの監督選びの方針はシンプルだった。興行記録を参照してヒット作を作り出せる監督であればそれで良かった。声をかけた監督たちの反応は様々なものだった。サム・ペキンパーのように全く乗ってこない監督もいれば、『ブリット』(68)のピーター・イェーツ、『キングコング』(76)のジョン・ギラーミンのように大いに興味を示す監督もいた。あるいは『スター・ウォーズ』(77)を製作中だったジョージ・ルーカスのように、スケジュールを理由に辞退する監督もいた。


 当時、30代前半のイリヤは、ベテラン監督よりも同世代の監督と組みたがっており、ある若手監督のエージェントからの売り込みに興味を示した。テレビ映画出身で、劇場用映画はまだ1本しか撮っていないが、現在はサメが襲撃してくる映画を撮っているというスティーヴン・スピルバーグである。イリヤは直ちに、『激突!』(71)と『続・激突! カージャック』(74)を観て演出力に感嘆し、父のアレクサンダーにスピルバーグと契約すべきだと進言した。しかし、父はスピルバーグの才能は未知数と考え、製作中の『ジョーズ』(75)を観るまで待つべきだと主張した。結果として、『ジョーズ』の公開後に慌ててスピルバーグの獲得に動こうとしたが、既に『未知との遭遇』(77)の製作準備に入っており、遅きに失した。


 最終的に007シリーズで知られるガイ・ハミルトンに監督が決定したのは、〈007シリーズのような規模の大作映画〉を目指していたサルキンド親子にとって、最も相応しい存在だったのだろう。イタリアのチネチッタ撮影所で撮影準備が始まり、キャスティング作業も本格化した。最初に決まったのがスーパーマンの父、ジョー゠エルを演じるマーロン・ブランドである。2週間の拘束で370万ドルという高額のギャラが支払われることが大きな話題を呼び、子ども向けの他愛のない映画と見られていた『スーパーマン』が風格のある大作映画として認識され、資金調達はいっそう順調に進むようになった。そして、ブランドとクレジットが並ぶならと、悪役を渋るジーン・ハックマンの出演も可能となった。




 ただし、大物俳優を2人揃えることが出来たものの、2人は共に撮影開始時期を契約に盛り込んできたため、撮影延期は不可能な状況に追い込まれた。撮影に使用可能な脚本に改訂する作業や、キャスティング、特殊技術を多用することによる未解決の問題が多々残されたままだった。イタリアではスーパーマンの飛行シーンのテスト撮影などが行われたが芳しい結果を出せず、遅々として製作準備は進んでいなかった。その上、マーロン・ブランドからイタリアでの撮影には参加できないという連絡が入ってくる。というのも、出演した『ラストタンゴ・イン・パリ』(72)の激しい性愛描写が物議を醸していたため、イタリアに入国すれば逮捕される恐れがあった。また、リラの急騰もあり、撮影は『スター・ウォーズ』の撮影が終わり、どこのスタジオも空いていたイギリスへ移すことになった。


 ところが、今度は監督のガイ・ハミルトンの参加が不可能になってしまう。イギリス出身のハミルトンは、重い税金を逃れるために国外へ住まいを移した直後であり、イギリスで数か月にわたって撮影をすることは困難だった。


 再び監督探しが始まり、『大地震』(74)を手がけたマーク・ロブソンが有力視される中で、より若い『オーメン』(76)を大ヒットさせている最中のリチャード・ドナーがクローズアップされてきた。なお、マーク・ロブソンは1978年6月に心臓発作で急死しており、もし彼に監督を依頼していれば、撮影途中で監督が死亡していたかも知れない。それ以前に1年以上に及ぶハードなスケジュールに耐えられたかどうか。当時30代半ばのドナーは、イリヤから「スーパーマンの映画を2本撮ってくれないか?監督料は2本で100万ドル出す」という電話を受け、高額なギャラに驚きながら、〈マーロン・ブランド、ジーン・ハックマン、スーパーマン、100万ドル〉という魅力あふれる4点セットの申し出に、監督を引き受けることを決意する。だが、この時点で指定された撮影開始の期日までに半年を切っていた。


 こうして監督はリチャード・ドナーに決定したものの、大作の準備期間としてはあまりにも時間がなさすぎた。それでもドナーは意気軒昂に、まず脚本の再検討から始めた。時代錯誤なセリフや設定を外し、スーパーマンが宿敵のレックス・ルーサーを探しながらメトロポリスを飛んでいると、ハゲ頭の男を見つけて捕まえてみると、『刑事コジャック』の決めゼリフ"Who loves ya, baby?"を言う本物のテリー・サバラスが登場するといった楽屋オチも削除した。そして美術のコンセプトを見直して荘重な世界観を作り上げようとした。特にドナーが注文を出したのが、スーパーマンとロイス・レインのラブロマンスをメインに置くことだった。



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