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監督vsプロデューサー『スーパーマン』の撮影現場では何が起きていたのか?

監督vsプロデューサー『スーパーマン』の撮影現場では何が起きていたのか?


仲介人リチャード・レスター登場



 サルキンド親子は、『スーパーマン』の現場を立て直す映画人を呼び寄せた。映画監督のリチャード・レスターである。『ナック』(65)でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞し、『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』(64)、『ヘルプ! 4人はアイドル』(65)のビートルズ映画でもよく知られた存在だが、この時期は『ジャガーノート』(74)、『ロビンとマリアン』(76)などアクション映画や恋愛映画などもこなす職人監督という立ち位置だった。レスターは、サルキンド親子とは『三銃士』『四銃士』で組んでおり、親子のクセの強さと対処法も心得ており、間に立つには申し分ない存在だった。


 ちょうど新作の合間ということもあり、また『スーパーマン』のような大作映画は経験していなかったレスターは、プロデューサー的な立ち位置での調整役に興味を覚えた。そして直ぐにドナーと面会した。そのときドナーは、これで自分は解任されると覚悟を決めたという。それほど他人の映画の現場に実績のある映画監督が入ってくることは異例だった。だがレスターは、自分はプロデューサーとドナーとの仲介役であると強調した。そして求められない限りは内容に関して口を挟むことはないと宣言し、ドナーが認めなければキャストにもスタッフにも話しかけないと誓った。


 こうしたレスターの真摯な態度がドナーを軟化させ、レスターは現場に迎え入れられた。実際、撮影を進めていく上でプロデューサーとの意見交換は欠かせないだけに、レスターが間に入ってくれることはドナーにとっても助かったというのが本音でもあった。もっとも、サルキンド親子にとっては、レスターが現場に常駐するということは、何かあれば直ちにドナーの首を切ってスムーズな監督交代が実現するという目論見があったことは間違いあるまい。


 プロデューサーとしてリチャード・レスターが最初にやったのは、『スーパーマン』と『スーパーマンⅡ』の同時撮影を中止させることだった。続編の撮影は既に7割近く終わっていたが、スケジュールと予算の問題が大きくのしかかってきた現状では、最優先すべきは『スーパーマン』を完成させ、公開にこぎつけることだと主張した。複数の撮影チームを再編成して同時に撮影を進めさせ、特撮パートの効率化を図るなど、レスターが参加した半年で体制を立て直すことが出来た。


 しかし、問題はまだあった。脚本が完全ではない状態で撮影に入ったことから生じた欠点を、レスターは意見した。「クライマックスでメインキャストが誰も危機に陥らないのはおかしいんじゃないか?」。


 以下は、『スーパーマン』の結末に触れるので回避したい方は読み飛ばしていただきたいが、主要人物が絶体絶命の危機に遭うというのは娯楽映画の常道で、そうしないと安全無敵な存在になってしまい、観客が手に汗握ることはない。スーパーマンは無敵のヒーローだけに、観客は安心しきっている。そうなると、周辺人物だけでも危機に陥らせなければならない。そこでレスターは、マリオ・プーゾの第一稿脚本にあった設定を復活させることを提案した。それは、ヒロインのロイス・レインを殺すことだった。




 といっても、ヒロインを本当に死なせるわけにはいかない。何らかの方法で生き返らせなければならない。「どうやって生き返らせる?」とドナーたちが問いかけると、こともなげにレスターは、『スーパーマンⅡ』のラストシーンを、『スーパーマン』のラストに移動させればいいと答えた。


 当初、『スーパーマン』のラストは、発射されたミサイルに追いついたスーパーマンが進路を宇宙に向けさせて爆発させるというものだった。その影響で、宇宙空間を漂っていたクリプトン星を追放された三悪人が覚醒し、地球に向かっていくところでエンドマークとなり、続きは『スーパーマンⅡ』へ――という二部作らしい終わり方になっていた。


 一方、『スーパーマンⅡ』の当初のラストは、ロイス・レインに正体が露見したスーパーマンが彼女の記憶を消すために地球を逆回転させて時間を戻し、全てをリセットすることになっていた。レスターは、この〈地球逆回転〉を1作目のラストに持ってくることで、ロイス・レインの死を悲しむあまり、スーパーマンが人類の歴史に干渉して彼女を生き返らせるというルール違反を犯すことで、人間らしさを出せると踏んだのだ。今となってはレスターの意見が、スケールの大きな物語を締めくくるに相応しい正鵠を射たものであったことは明らかだろう。こうして、1977年3月に撮影に入った『スーパーマン』は、1978年7月、ようやく1作目の撮影を終えた。



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