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『バグダッド・カフェ』“修理が必要なコーヒーマシン”が象徴する「心」の物語

『バグダッド・カフェ』“修理が必要なコーヒーマシン”が象徴する「心」の物語

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愛され続ける理由



 『バグダッド・カフェ』の人気の秘密について遠藤さんはこんな話もしてくれた。


 「この映画には悪人が出てこないですよね。すごくシンプルな作りになっているところがいいと思います。公開当時はバブルの時代で、経済が盛り上がっていたのに、この映画は心の問題を描いています。“修理が必要なコーヒーマシン”という歌詞が象徴的に物語を語っています。公開の時、特に手の込んだ宣伝を仕込んだ覚えはないのですが、いつの時代にも通用する心の問題が描かれていたおかげで、根強い人気を得たのでしょう」


 この映画の設定をよく考えてみると、確かに今に通じる問題を少し先取りしていた作品だったのかもしれない。中心になるのは、ヨーロッパからやってきた異邦人(移民)、アフリカ系アメリカ人、ネイティヴ・アメリカンなどで、80年代のハリウッドではこうした人種だけが真ん中にいる映画は作りにくかった。また、主人公は(若い女優ではなく)人生に疲れたふたりの中年女性で、結婚に失敗した彼女たちはほろ苦い感情や悲哀を抱えている。そんなふたりがやがて心を通わせ、周囲を巻き込みながら、人種を越えたコミュニティを作っていくところが新鮮に見える(ヤスミン役のゼーゲブレヒトは「女性による新たな家長制度を描いた作品」と解釈しているようだ。だから、最後は「ブレンダに相談するわ」という意味深な言葉で終わる)。




 監督のパーシー・アドロンは2018年8月に英国の新聞“ガーディアン”でこんなコメントも発表している――「いま、振り返ってみると、この映画には普通の白人は出てこない。トランプが最も嫌っている人々が主人公だ。だから、30年たった今でも、どこか現代的な物語として受け取ってもらえるのかもしれない」


 いろいろ考え直すと、監督の先取り精神が発揮された内容だったことが分かる。アメリカでは公共放送局やHBOで定期的(特にクリスマス)に放映されている。また、舞台になったカフェには世界中から多くの人がやってきて、到着すると感激して泣き出す人さえいるそうだ。


 スペインのバルセロナには「バグダッド・カフェ」という映画館があり、7年間上映された記録があり、今でも年に3~4か月は上映されるそうだ。


 その人気は長い年月を経て広がり、まさに世界中の人に愛される“心の映画”の1本となっているのだ。



文: 大森さわこ

映画ジャーナリスト。著書に「ロスト・シネマ」(河出書房新社)他、

訳書に「ウディ」(D・エヴァニアー著、キネマ旬報社)他。雑誌は「週刊女性」、「ミュージック・マガジン」、「キネマ旬報」等に寄稿。ウエブ連載をもとにした取材本、「ミニシアター再訪」も刊行予定。



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作品情報を見る





『バグダッド・カフェ』4K修復版 Blu-ray

発売元:WOWOWプラス

販売元:紀伊國屋書店

本体価格:¥5,800+税

(C)1987 / Pelemele Film GmbH - Pro-ject Filmproduktion im Filmverlag der Autoren GmbH & Co. Produktions-Kommanditgesellschaft München - Bayrischer Rundfunk/BR - hr Hessischer Rundfunk.

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