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『レディ・プレイヤー1』と未来のアイデンティティ 「Cinema未来館」SFは未来のシナリオか?【CINEMORE ACADEMY Vol.11】

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『レディ・プレイヤー1』と未来のアイデンティティ 「Cinema未来館」SFは未来のシナリオか?【CINEMORE ACADEMY Vol.11】

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VR時代における評価の物差し



Q:今回のトークセッションでは、Slidoというサービスを使い、会場の皆さんにも参加してコメントをいただいています。


まずは『レディ・プレイヤー1』の中で、お気に入りのキャラクターは?」という質問でアンケートを取りたいと思います。ゲストのお二人の好きなキャラクターは誰でしたか?



久保:私は映画を見ていると女の子の描き方が気になるのですが、今作のアルテミスの描き方が良かったと思いました。


Q:どのあたりが良かったですか?


久保:パーシヴァルとのダンス後のシーンで「本当の私を知らないのに!」と言うところですね。女の子ってリアルのビジュアルがネット上にも反映されるケースが多いと思うのですが、アルテミスはコンプレックスを抱えながら、ネット上では違う自分を作っていて。私の注目している「盛り」という、バーチャルに自分を格好良く作る行為をしていて、しかしそれがリアルとは違うことを客観的に理解している。良い描き方だなと思いました。


Q:ありがとうございます。アルテミスが31%の得票率ですね。どうですか宮本さんこの結果をみて。


宮本:エイチが人気だというのが良いですね。キャラクターが男性なのか女性なのか分からないところから始まっていて、前半を見て男性だと思った人も多いと思うのですが、そこが面白かったですよね。




Q:ありがとうございます。それでは早速ですが本日のトークテーマの1つ目『レディ・プレイヤー1』と未来のアイデンティティについて話していきたいと思います。宮本さんいかがですか。


宮本:先程のキャラクターの話ともひっかけて話したいと思います。僕が一番好きなキャラクターはハリデー研究をしていたオタクの研究員の人たちなんですよ。オタク研究が仕事になるというのが非常に面白かったです。ゲームの作り手の思想自体がコンテンツだけでなく社会全体に発展している世界。ハリデーが神格化されていて気持ち悪い部分もありますが。作り手が何かを世界に埋め込んでいて、それをどう調べていくかと言うことは、結局は作り手(ハリデー)を調べていく研究になる、というのが肝になっている。このつくりがあの世界の面白いところだな、と思っています。


久保:宮本さんのおっしゃったところは私も興味深かったです。リアルな世界で評価されなかった物差しが評価される世界があってほしい、というのがバーチャルな世界に期待するところです。


私自身、小さな頃から走るのが遅かったんですよね。小学校で評価するとなったら走る速さだけでランキングされてしまって…それが出来ないということが嫌でたまらなかった。走る速さや顔といった、生まれ持った能力で評価する世界なんて、原始時代じゃないかと思うのですが、未だにリアルの世界ではそういったものが残っていますよね。


今作では、本当のビジュアルではなく作り上げたビジュアル、エイチのハッカー力などが評価されていました。更にプラスして“オタク力”が評価されているところが、この映画のすごく好きなところでした。色んな物差しがあったほうが良いですよね。


宮本:今の話と関連して、これは少し映画に対して批判的な部分になってしまいますが「元の身体から離れられる良さ」というのが、実際どれくらいあったのかというのが気になりました。久保さんとイベント直前に打ち合わせしたときに、この映画では意外とハードウェア格差があったという指摘をされていたのが印象的だったのですが、確かにそういう現実世界の問題点を解決しているかと言われると謎だな、と思っています。


久保:そうなんです!私はゲームをあまりやらないので、オアシスで強い人たちっていうのは、一体何が凄いから強いのかというところが気になっていて。もちろん、オタク力ということもありましたが、操作とかは動きをインターフェイスでとられていたりして…どんな人間の能力がオアシス内での評価に関わっていたのですか?


宮本:そこがこの映画で微妙なところだったのですが、コントローラーで出来る操作もスーツを着てやっていることが謎ですよね。VRならでは「ではない」部分をVRでやっているところ。ゲームの良さって自由に自分の身体から離れてプレイ出来るということだと思うのですが、今作では意外と元の身体との紐付けが多くて、謎ポイントだなと思いながら見ていました。


久保:あと企業がお金をかけたインターフェイスを使っていて、だから強いという表現があったじゃないですか。ああいったことが今後実際に起きてしまうのかと思ってしまい、そこが嫌いでしたね。


最終的にはそれらを持っていない子どもたちが勝つという、良いところに繋がるのですが、そういった装置を持っていることがオアシス内でのランキング上位の前提といったところが、どうなんだろうなと思ってしまいました。


宮本:今ゲーム業界で重視される点の一つが「どういった人がゲームをプレイできるのか」という点です。例えば「アンチャーテッド4」というゲームは、現実で身体が動かしにくい人でもゲームがプレイできるように物凄くこだわって作られています。誰でも楽しめるようなゲームデザインなんです。オアシスの中では本当に身体を動かさなくては駄目で、ゲーム内なのに逆に格差が広がっている部分があり、ゲームデザインとしては今の流れとは逆かもと思いましたね。



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