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『レディ・プレイヤー1』と未来のアイデンティティ 「Cinema未来館」SFは未来のシナリオか?【CINEMORE ACADEMY Vol.11】

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『レディ・プレイヤー1』と未来のアイデンティティ 「Cinema未来館」SFは未来のシナリオか?【CINEMORE ACADEMY Vol.11】

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未来を考える映画イベント「Cinema未来館」が、お台場の日本科学未来館で2020年10月24日(土)〜25日(日)の2日間に渡って開催された。


本イベントは、新型コロナウイルスと共に生きる時代に、広くゆったりとした展示空間を生かした新しい科学館の楽しみ方を提案するシリーズ第2弾。今回は「SFは未来のシナリオか?」をコンセプトに、CINEMORE編集部もセレクトをお手伝いしたSF作品を上映、専門家の方々をお招きしてスペシャルなトークセッションが行われた。


いま、私たちは、これまで持っていた価値観や行動様式の変容を求められる事態に直面しています。一方で、現実に起こりつつある事態は、すでに、過去に映画や小説、漫画などで未来の姿として描かれてきました。SFが描く未来世界の状況と課題、そしてそこに生きる人々の姿から、私たちは何を読み取るべきなのでしょうか。
パンデミックだけではなく、SFが描いてきた物語は、自分たちが生きる未来に実際に起こりうる--この実感を多くの人が持っている今だからこそ、考えるべき未来のシナリオを共有するためのイベントです。SFが描いてきた未来の姿と研究者・クリエイターが伝える現実の姿を重ね合わせ、これから訪れる世界の可能性と、そこへ向かう前に私たちが考えるべきことを、参加者の皆さんと共に探ります。

イベント公式サイトより


今回のCINEMORE ACADEMYでは、本イベントのスペシャルトークセッションの様子をレポート。まずは、10月24日(土)『レディ・プレイヤー1』(18)上映後に行われた「『レディ・プレイヤー1』と未来のアイデンティティ」の様子をお届けする。


SF作品を通して、現代社会の移り変わりとその背景に迫る。



ゲストスピーカー



宮本道人

科学文化作家、筑波大学システム情報系研究員、株式会社ゼロアイデア代表取締役

1989年生。フィクションと科学技術の新しい関係を築くべく、研究・評論・創作。編著『プレイヤーはどこへ行くのか』、原案漫画連載「教養知識としてのAI」(人工知能学会誌)、対談連載「VRメディア評論」(日本バーチャルリアリティ学会誌)、共同企画連載「SFの射程距離」(SFマガジン)など。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。




久保友香

メディア環境学者

日本の視覚文化の工学的な分析や、シンデレラテクノロジーの研究に従事。著書に『「盛り」の誕生-女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識-』(太田出版、2019年)。2000年、慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科卒業。2006年、東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了。博士(環境学)。東京大学先端科学技術研究センター特任助教、東京工科大学メディア学部講師、東京大学大学院情報理工学系研究科特任研究員などを務めた。



企画・ファシリテーション



宮田龍

日本科学未来館 科学コミュニケーター



Index


現実と虚構、女子とデフォルメ



Q(宮田 ※以下Q):本日のトークセッションのタイトルは「『レディ・プレイヤー1』と未来のアイデンティティ」です。早速ゲストスピーカーの2名をお招きしましょう。


宮本:筑波大学でSFの研究をしています、宮本道人です。SF作品が研究者にどういう影響を与えているのか、フィクションと現実を行ったり来たりするような研究をしています。また僕はVRコンテンツの評論もしていまして、VR学会誌で「VRメディア評論」という対談連載を持っています。本日はよろしくお願いします。


Q:宮本さんは大学では素粒子物理学、大学院では神経科学を専攻されていたとのことですが、何かご自分の中でのテーマがあったのでしょうか?


宮本:現実と虚構がどう違うのかが気になっていたんです。現実のことを調べるには、物理の素粒子のことや人間の脳が世界をどう捉えているのかといったことが、研究対象として挙げられます。


これを人工物に置き換えた時、現実世界の研究はAIの研究に置き換えられますし、脳の研究はAI研究に置き換えられると思っていて、今はそれらの関係を考えています。




Q:ありがとうございます。本日宮本さんには、いろんな切り口で研究されている立場から、現実というものがSFにどうアプローチしているのかお話していただきたいと思います。



久保:久保友香と申します。私はメディア環境学という分野の研究をしています。デジタルメディア技術が発展していく中で、人間がそれとどう共存して持続可能な発展をしていくかということを考える学問です。その中でも私は特に、日本人がどういう風にデジタル技術と協働していくかということに興味があって研究しています。


その一つのアプローチとして日本の歴史を掘り下げていく、今根付いている文化との関係を見ていくという方法が挙げられます。


そしてもう一つのアプローチとして、日本の若い女の子というところに興味を持っています。彼女たちは、お金はないけど時間があるという環境下で、とてもコミュニケーション上手で、新しい技術を使いこなしながらコミュニケーションを達成しています。そんな彼女たちが普段やっていることが、未来のコミュニケーション技術のヒントを持っているのではないかと思い、彼女たちを観察しています。


個人的には、あまりゲームはやってこなかった方なのですが、女の子たちの行動の中では、既にバーチャル世界でのコミュニケーションが進んでいるところがあるので、そうした視点から『レディ・プレイヤー1』と違うところ、重なっているところ、遅れているところ、進んでいるところもありますよ、ということを本日はお話させていただければと思っています。


Q:久保さんは女の子が写真を撮ってInstagramなどにアップする際に、目を大きくしたりする「盛り」という分野も研究されていますね。


久保:そうです。日本のデフォルメ表現の文化を研究している中で、現在の女の子たちも化粧やプリクラを使って自分の顔をデフォルメしているな、と。


そのことを彼女たちは「盛る」と呼んでいて、これに注目して研究しています。またそれを支援している技術のことをシンデレラテクノロジーと呼んで、関係を調べています。



Q:シンデレラテクノロジー、デフォルメするということは現実からバーチャルへアプローチしていくという感覚ですか。


久保:はい、ネット上での自分自身を作っているところに使われていると考えています。


Q:ありがとうございます。本日久保さんには、現実からバーチャルにどういった風にアプローチしているか、お話いただければと思います。



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