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『るろうに剣心 最終章 The Beginning』大友啓史監督 ものづくりで必要なのは細部への意識【Director’s Interview Vol.120】

『るろうに剣心 最終章 The Beginning』大友啓史監督 ものづくりで必要なのは細部への意識【Director’s Interview Vol.120】

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『るろうに剣心』チームに漂う、異常な緊張感



Q:本作においては、血しぶきや破壊など撮り直しがきかないシーンが多数盛り込まれています。感情と動きが連結しているということは、ある種“隙間”がないということでもありますよね。そのぶん、現場の緊張感がすさまじかったのではないかと想像したのですが……。


大友:これは笑い話ですが、ある監督が「挨拶をしたい」と来てくれたのに、現場の雰囲気に気圧されて帰ってしまったということを、後で制作スタッフに聞きました(笑)。やっぱり『るろうに剣心』の現場って異常なテンションでやっていたんだなと思いましたね。


巴が剣心に「あなたは本当に血の雨を降らすのですね」と声をかけるシーンなど、CGで血しぶきを足してはいますが、動きもあるし衣装にもかかるし、役者たちも血しぶきを浴びるわけで、コンディション的にも「一発勝負じゃないと撮れない」という緊張感は常にありましたね。そもそも芝居ですら同じ芝居は二度と撮れないと、僕はそう思っていますから。全体的に時間の制約も大変で(苦笑)、タイムスケジュール的に1回で撮るしかないことも往々にしてありましたね。

 『るろうに剣心 最終章 The Beginning』©和月伸宏/集英社 ©2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning 」製作委員会


Q:僕は大友監督の作品の“汚し”の演出が大好きなのですが、きっと準備にもものすごく時間がかかりますよね。


大友:本当にそうですね。朝の8時に撮影開始する日なんて、衣装部やメイク部は何時から準備を始めているんだという話ですよね。エキストラのぶんもやらなければならないし。ちゃんとやるって、本当に大変なんですよ(苦笑)。


黒澤明監督が時代劇を撮る際に、エキストラを50人くらい選んで、前もって鎧を渡して慣れさせたというエピソードがありますが、そういうことなんですよね。その人がどういう職業でどういう生活をしているかで身なりも体型すら変わってきてしまうわけで。本来だったら20年とかをかけて積み重ねてきた職業的な特性を、撮影の一瞬だけ、“一夜漬け”でやれることをやるわけだから、逆に言えば全員がそういう気持ちになっていないとできないですよね。


その点、『るろうに剣心』チームは僕が「もういい」って言ってもこだわってくれる。夏のシーンであれば、衣装部やメイク部が霧吹きを持ってエキストラの間を回って、“汗”を作ってくれていますし。


神谷道場の全貌初公開!映画『るろうに剣心 最終章 The Final』


美術で分かりやすいのは、神谷道場のセットですね。神谷道場は何十年もの歴史があって、その空間で何百人もの剣士が手合わせしてその汗が染み付いているはず。一晩寝かせたカレーが美味しいように、年月が染み込んだ空間のほうが味が出ますよね。それを、出来立てほやほやのセットでどう表現するか。それは例えば美術スタッフがセットを作りながら、新しさが出ないように、わざとどかどか土足で歩くとか、そしてそれを拭いて磨きをかけるとか。そういった作業の繰り返しになるわけです。「そこに人がいた感じ、実在感をどう出せるか」は細かい部分だしアナログでもあるけれど、すごく大事な要素なんですよね。




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