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『るろうに剣心 最終章 The Beginning』大友啓史監督 ものづくりで必要なのは細部への意識【Director’s Interview Vol.120】

『るろうに剣心 最終章 The Beginning』大友啓史監督 ものづくりで必要なのは細部への意識【Director’s Interview Vol.120】

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『The Final』と『The Beginning』をつなぐ“日記”の重要性



Q:リアリズムでいうと、大友監督の作品はモノローグの使い方が秀逸です。『3月のライオン』(17)では主人公のモノローグを多めにすることで親近感をもたらし、『るろうに剣心』シリーズではあえて抜いて、現実感を強めつつ作品のテンポ感も担保している。


大友:確かに、「お客さんに説明する」という意識では使っていないですね。『The Beginning』では巴のモノローグが入りますが、あれは「本当の感情を隠していた、巴という封建時代の女性の本心」を表すための演出として用いています。


巴は清里(窪田正孝)という幼なじみで許嫁がいますが、真の意味での恋愛感情があったのかはわからない。当時、結婚は親に決められるもので、家と家の問題でもあったわけですからね。清里を亡くしたことで初めて、自分が持っていた愛情の“質量”に気付き、哀しみという感覚を覚えたのかもしれない。武家の娘のたしなみとして、感情を表に出さないようトレーニングされているでしょうし、いわば、清里を失ったことで感情のうねりが生まれた部分もあったと思う。そんな彼女が、唯一自分の感情をさらけ出せるのが日記の中だけだった。

 

『るろうに剣心 最終章 The Beginning』©和月伸宏/集英社 ©2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning 」製作委員会


そういった流れがあるので、『The Beginning』においても『The Final』においても「日記を通して巴の本心に気付く」という演出を施しました。『The Beginning』では剣心が日記を読んで巴の本心に気付き、『The Final』では縁(新田真剣佑)に日記が託される。そしてそこに、神谷薫(武井咲)が絡んでいく。彼女の「人を活かす剣(活人剣)」と、巴の「これから先も人を斬り…けれどその更に先、斬った数より大勢の人を必ず守る…今ここで決して死なせてはならない」がシンクロしていく。剣心・縁・薫の行動が、巴の日記の言葉に収斂していくという構造が、脚本を書いていてすごくしっくり来たんですよね。


それぞれのリアクションは違うけど、剣心も縁もある意味救われていく。そのためのモノローグになるよう、どこまでディテールを表現していくかは、見せ方含めて意識したところです。





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