向かって左:佐藤現プロデューサー、右:川尻将由監督
『CHERRY AND VIRGIN』川尻将由監督×佐藤現プロデューサー アニメのA24を目指す!【Director’s Interview Vol.129】
フォルマンにリンクレイター…憧れの監督たち
Q:『ステラ女学院高等科C3部』から『ある日本の絵描き少年』で作風ががらりと変わりますが、きっかけはあったのでしょうか。
川尻:大学生のときに子どもの絵の研究本を読んでいて、そのころからやりたい気持ちはありましたね。自主制作を行った理由としては、アニメ業界でいちスタッフとしてやっていくのも、自分の企画で監督になることも難しいでしょうし、仕事があったとしても、その当時人気の漫画原作だろうから、オリジナルで自分がやりたいことができるまでを想像すると、あまりに途方もないなと思って、自主制作しかないと考えたんです。
アニメ業界の方はみんなそうだと思うんですが、自主アニメを作りたい人はいっぱいいるけれど、仕事をしながらだとあまりに忙しくて、とん挫してしまうんですよね。ですが僕の場合、スタジオが傾きかけていて人員整理も行われていたという状況もあって、「どのみちここにはいられないし、作るしかない」と舵を切ることができました。
Q:その中であの斬新な表現が生まれてきたわけですね。制作後に『6才のボクが、大人になるまで。』(14)や『コングレス未来学会議』(13)をご覧になって、衝撃を受けたというお話を聞きました。
川尻:「こんなにすごい作品があるんだったら作らなくていいじゃん」とすら思いました(苦笑)。『戦場でワルツを』(08)もそうですが、アリ・フォルマン監督が『コングレス未来学会議』で行った実写とアニメの融合など、影響は受けていますね。
『コングレス未来学会議』予告
Q:リンクレイター監督も『ウェイキング・ライフ』(01)や『スキャナー・ダークリー』(06)などアニメを作っていますよね。
川尻:ロトスコープ(実写をベースにする形でアニメを作っていく手法)ですよね。『ウェイキング・ライフ』の中で、記憶が曖昧なんですが、「映画は脚本よりもそこにいる人間に基づいて撮るべきだ」というような台詞があって。これはのちに『ビフォア〜』シリーズや『6才のボクが、大人になるまで。』の撮り方に直結していくので、リンクレイター自身の作家としての野心を表しているんだろうなと感じました。
ポン・ジュノ監督が第92回アカデミー賞授賞式のスピーチで話した「『最も個人的なことが、最もクリエイティブなことだ』――偉大なるマーティン・スコセッシの言葉です」にもつながってきますよね。僕自身も、映画とは人生に直結しているべきだという感覚があります。
Q:そこから、実写と漫画、アニメが融合したスタイルが出来上がっていったのですね。
川尻:個人史的なものにしようとすると、自分が生きてきた30年ってそのまま平成の漫画史だよなと思い始めて。この20分を観れば、ざっくり平成で起こった少年漫画の動きがわかるようにしよう、とは考えていました。リンクレイターのサブカル映画への憧れもあるんでしょうね。(笑)