向かって左:佐藤現プロデューサー、右:川尻将由監督
『CHERRY AND VIRGIN』川尻将由監督×佐藤現プロデューサー アニメのA24を目指す!【Director’s Interview Vol.129】
国内のアニメの規模感は、大体3パターンに分かれる
Q:佐藤さんにぜひお伺いしたいのですが、アニメ映画の中でも商業ベースと芸術ベースといいますか、作品によって客層がかなりシビアに分かれていると思います。ひょっとしたら実写以上かもしれません。アヌシー国際アニメーション映画祭系のアニメ映画と、国産のエンタメ作で観客が分断されているといいますか。
佐藤:そうですね。僕の部署では今、北朝鮮の強制収容所を描いた『トゥルーノース』(20)という問題作も配給していて、お客さんも結構入ってくれているんですが、漫画のアニメ化作品とは客層が全く違いますね。『戦上でワルツを』だったり、社会派の作品を観るマーケットって本当に小さい。細分化するとしたら、アヌシー国際アニメーション映画祭などの受賞作を小規模で公開するもの、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(20)のように国内の大作を大規模に公開するもの、『映画大好きポンポさん』(21)のように中規模に公開するもの、大体3パターンに分かれるように思います。
『トゥルーノース』予告
Q:その中で、『CHERRY AND VIRGIN』は商業の長編と考えたときに、ポジショニングがすごく独特なのでは?と思いました。可能性と同時に、難しさもあるように感じます。
佐藤:そんなに潤沢ではないとはいえ自主とは違うので、お金はかけなきゃいけませんし、難しいですね。クラウドファンディングで集めているのは、あくまで広げるためのお金であって、基となるお金は東映ビデオで出すわけだから責任は伴いますが、「じゃあこのラインで」というのが浮かばないんです。ただ、『CHERRY AND VIRGIN』は『ある日本の絵描き少年』から通じているのですが、男女の出会いを通じてキャラクターの絵柄が変化していく物語で、共感性は高いと思うんです。ちゃんと見せられれば、ハマってくれる人はいるんじゃないかと感じています。
とはいえ、おっしゃる通り、「“あれ”みたいな作品」とは、なかなか言えないんですよね。あえて言うなら『音楽』がオタワ国際アニメーション映画祭で賞を獲ってじわじわと面白さが伝わっていったように、ああいう路線を目指したいなと思っています。「お金をかけた結果、本人のクリエイティビティが損なわれた」とならないように、商業主義に走り過ぎることなく規模が大きくなっていけたらいいですね。