向かって左:佐藤現プロデューサー、右:川尻将由監督
『CHERRY AND VIRGIN』川尻将由監督×佐藤現プロデューサー アニメのA24を目指す!【Director’s Interview Vol.129】
アニメ映画の観客層の現状を打破したい
Q:佐藤さんは、2018年のぴあフィルムフェスティバルで川尻監督の『ある日本の絵描き少年』に出会ったと聞きました。
佐藤:受賞作上映会に行って色々な作品を観たときに、1本だけアニメ作品があったんです。アニメだと思っていたら実写や漫画の表現も入っていて「これはすごいな」と思いました。
Q:その後、「監督と連絡が取りたい」と自分から働きかけたそうですね。
佐藤:まず川尻監督に会ってみたいと思ったんですよね。僕はコアなアニメファンではないので一概に「アニメは〜」とは言えないのですが、自分が思っていたアニメ作品の範疇から飛び出ていると感じたんです。さっきのマーティン・スコセッシ監督のお話に通じますが、もろに作家の顔が見える作品だということがすごく伝わってくるし、斬新な手法なんだけど扱っているテーマは普遍的で――。物語の強さと手法の斬新さが両立している点で、すごい才能だと思って、作った人に会いたくなったんですよね。
『ある日本の絵描き少年』本編
Q:その後、対面した際に今回の『CHERRY AND VIRGIN』につながるお話が出てきたのでしょうか。
佐藤:そうですね。僕がアニメを作っていないこともあって、20分のものを作るのにどれくらいの人が関わって、年月がかかっているのか……。その辺りをお聞きしつつ、「今後はどういうものを作りたいんですか?」といったことや、映画の話もしましたね。その際にポール・トーマス・アンダーソンやウディ・アレンなど様々な監督の名前が出てきて、すごく実写映画をご覧になっているんだなと感じました。
日本のアニメ映画の観客層って、一部の大ヒット作を別にすると、結構偏っている部分があると思うんです。お話を聞きながら、川尻監督だったらその辺りを打破できるのではないか、実写映画が好きな上世代の方々も観たがるような人間ドラマを作れるのではないかと思い、「劇場でかける作品をやるとしたら?」と夢想が始まりました。