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『ラストナイト・イン・ソーホー』エドガー・ライト監督 オマージュは意識しない、好きだから自然と出てくるんだ【Director’s Interview Vol.169】

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『ラストナイト・イン・ソーホー』エドガー・ライト監督 オマージュは意識しない、好きだから自然と出てくるんだ【Director’s Interview Vol.169】

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エドガー・ライトの映画に共通するもの、それは溢れんばかりの映画愛。最新作『ラストナイト・イン・ソーホー』も例外ではなく、「ミステリー/ホラー」映画への愛がスクリーンに炸裂する。60年代のロンドンを舞台に、殺人鬼から追われる少女たちは、ダリオ・アルジェントやブライアン・デ・パルマらの傑作を彷彿とさせる。だがどんなジャンルを手掛けたとしても、それまで見たことのなかった唯一無二のエドガー・ライト作品になっているのが、エドガー・ライトたる所以だろう。


今回の『ラストナイト・イン・ソーホー』には、どんな映画愛を込めたのか? エドガー・ライト監督本人に話を伺った。


『ラストナイト・イン・ソーホー』あらすじ

ファッションデザイナーを夢見るエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)は、ロンドンのデザイン学校に入学する。しかし同級生たちとの寮生活に馴染めず、ソーホー地区の片隅で一人暮らしを始めることに。新居のアパートで眠りに着くと、夢の中で60年代のソーホーにいた。そこで歌手を夢見る魅惑的なサンディ(アニャ・テイラー=ジョイ)に出会うと、身体も感覚も彼女とシンクロしていく。夢の中の体験が現実にも影響を与え、充実した毎日を送れるようになったエロイーズは、タイムリープを繰り返していく。だがある日、夢の中でサンディが殺されるところを目撃してしまう。その日を境に現実で謎の亡霊が現れ始め、徐々に精神を蝕まれるエロイーズ。そんな中、サンディを殺した殺人鬼が現代にも生きている可能性に気づき、エロイーズはたった一人で事件の真相を追いかけるのだが……。


Index


「願望と現実」



Q:これまでいろんなジャンルの映画にトライしつつも、最終的には全てエドガー・ライトの映画として着地させている印象があります。今回は「ミステリー/ホラー」ですが、このジャンルを選んだ理由は?


ライト:元々ミステリーやホラーの大ファンなんだ。このジャンルを観るには、まだ幼すぎるくらいの頃から観てるからね(笑)。そこから今に至るまで飽きることなくずっと好きだよ。このジャンルは、これまで色んな国や時代でたくさん作られてきたから、改めて観直すことも多いよね。もちろん、イギリスで活躍した偉大なフィルムメイカーたち、ヒッチコックやマイケル・パウエルにエメリック・プレスバーガーらも、このジャンルでたくさん映画を撮っていたし、僕もいつかは撮ってみたかったんだ。


Q:オープニングシーンは時代設定も曖昧で、これから始まる映画に対していろんな想像を促されます。冒頭からとても期待感があふれていたのですが、あのシーンに込めた意図は?


ライト:オープニングシーンは、僕が生まれ育った街から比較的近い、コーンウォールという地方で撮影したんだけど、そこは昔ながらのものが残っている地域なんだ。だから映画を観た人は、この映画の時代設定がいつなのか最初はよく分からないみたいだね。その後、エロイーズが電車に乗ってBeatsのヘッドフォンをしているところを見て初めて「現代の映画なんだ」と気づくらしい。でも僕はそれをとても気に入っているんだ。「この先がどうなるのか?どんな映画なのか分からない」って、とてもワクワクするよね。



『ラストナイト・イン・ソーホー』© 2021 Focus Features LLC and Perfect Universe Investment Inc. All Rights Reserved.


また、この映画のテーマには「願望と現実」というものがあって、オープニングはまさにそれを体現したシーンになっている。最初にエロイーズが出てきて、豪華なドレスを着ているのかと思うと、やがてそれが紙で出来たものだとわかる。私たちを魅了するもの、あるいは私たちがそうあって欲しいと願うものが、実は紙で出来ているという現実。あれは願望から現実に引き戻されるシーンなんだ。そしてそれが、この映画では何度も起きることになる。サンディも同じで、60年代のグラマラスなソーホーに憧れるけれど、冷酷な現実を目の当たりにして、願望から現実に引き戻されてしまうんだ。




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