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L/R15『愛なのに』『猫は逃げた』城定秀夫×今泉力哉 自分が書いた脚本が変わっていく面白さ【Director’s Interview Vol.195】

L/R15『愛なのに』『猫は逃げた』城定秀夫×今泉力哉 自分が書いた脚本が変わっていく面白さ【Director’s Interview Vol.195】

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コンペイトーからハリボーへ



Q:今回を踏まえて次にやってみたいことなどはありますか?


城定:いや、そこはどうですかね。毎回うまくいくとは限らないですからね(笑)。ただ今回は伸び伸びやれたところが良かったですね。それでも最初はお互い探り探りやっていて、今泉さんから「コンペイトー、ハリボーにしていい?」とか、一回一回許可をとりあってました。


今泉:そう、コンペイトーって何か見たことある気がするなって思って、ハリボーに変えてもらいました。あとは、役名は好みがあるから「役名ちょっとだけ直していいですか」みたいなやりとりもしてましたね。城定さんからは「なんで名前変えたいのか、今後の参考に教えてください」みたいな返事も来ました。


城定:役名に対してどういう思いなのかなって、それを聞きたかっただけです。ハリボーは全然変えてもらってよかった(笑)。


今泉:「コンペイトーをハリボーにする辺りが今泉さんっぽいよな」みたいに言ってましたよね(笑)。


城定:そうそう。「ハリボーにしていいですか」って言われた時、さすが今泉監督、オシャレだな、と思いつつ「いや、全然いいですけど、当たっても痛くないけどいいですか」とか言ってました(笑)。



『猫は逃げた』©2021『猫は逃げた』フィルムパートナーズ


Q:今後もこういった企画は続けていかれますか?

 

城定:企画にこだわらず、今泉さんとぜひ何かできれば良いですね。


今泉:そうですね。こちらこそです。自分の脚本を誰かが監督するっていうのは初めてで、それで面白くなったのはすごく嬉しかった。そういう脚本だけの仕事ってやってないので、城定さんが作る映画の脚本とかだったら、ぜひやりたいなと思います。


城定:今泉さんの脚本はすごくやりやすかったです。あえて詳細が書いてなくて、シーンの状況があって、あとはものすごい長いセリフがバーっと書いてある。セリフがいいから想像も膨らむんです。


今泉:細かい動きはいつも書いてなくて、その辺は役者任せでいつもやってるんです。それを城定さんは城定さんなりに解釈して雄弁に動かしてくれた。「なるほどそうか」と思う部分も多かったですね。


Q:今回は色々と発見があって本当に面白かったです。この2作を観てそう感じた方は多かったのではないでしょうか。


城定:多分正直だからだと思うんですよね。きれいな部分や切ない部分しか抽出しないのではなく、嫌なところもちゃんと出てくる。今泉さんの映画ってやっぱりそういう嫌なところをちゃんと描いている。もう。「気まずさの作家」って呼んでます。ほんとに勉強になった。『街の上で』とかもずっと気まずいですもんね。


今泉:改めて見ると気まずいだけですから。そこは山下敦弘監督の影響が大きいと思います。『リアリズムの宿』(03)とかまさにそうですよね。ずっと気まずいだけで、より悲しい状況になっていく。『リンダ リンダ リンダ』(05)も青春映画だけど、気まずい時間がすごくある。


あと、「主人公がずっと不機嫌だと映画が“持つ”」いう発明をした二ノ宮隆太郎という監督がいるのですが、彼の作品のように緊張感のある気まずさもありますよね。


城定:『どんてん生活』(99)とかもたまに見たくなる。


今泉:みんな、具合悪くなっていくだけだしね(笑)。



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監督・脚本:城定秀夫

1975年生まれ。東京都出身。武蔵野美術大学在学中から8mm映画を制作。同校卒業後、フリーの助監督として成人映画、Vシネマなどを中心にキャリアを積む。2003年『味見したい人妻たち(押入れ)』で映画監督デビューし、ピンク大賞新人監督賞を受賞。その後Vシネマ、ピンク映画、劇場用映画など100タイトルを超える作品を監督。2016、17、18、19年とピンク大賞において4年連続で作品賞を受賞した。近年の主な監督作に『性の劇薬』『アルプススタンドのはしの方』などがある。





監督・脚本:今泉力哉

1981年生まれ。福島県出身。2010年『たまの映画』で商業監督デビュー。2013年『こっぴどい猫』でトランシルヴァニア国際映画祭最優秀監督賞受賞。2019年『愛がなんだ』が公開され、大ヒットを記録。その他の主な作品に『サッドティー』(14)、『退屈な日々にさようならを』(17)、『アイネクライネナハトムジーク』(19)、『mellow』(20)、『his』(20)など。金曜ナイトドラマ「時効警察はじめました」やWOWOW「有村架純の撮休」にも演出として参加するなど精力的に活動している。2021年も『あの頃。』『街の上で』『かそけきサンカヨウ』を立て続けに公開。



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成




『愛なのに』 

新宿武蔵野館ほか全国順次公開中

©2021『愛なのに』フィルムパートナーズ




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©2021『猫は逃げた』フィルムパートナーズ

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