映画とCM、感覚の違い
Q:CM業界と映画業界ではどんなお仕事をされていたのでしょうか。
狩野:今は広告のクリエイティブディレクションの仕事が一番多くて、自分の企画に関しては自分で演出したりもしています。映画業界にいたときは主に助監督をやっていて、CGを担当していた時期もあります。以前ロンドンにいたときには自主制作映画の現場にいて、それが映像業界に入ったきっかけでした。
Q:ロンドンでの映画製作はいかがでしたか?
狩野:その頃僕は音楽の仕事をしていて、その仕事をしながら、学生の自主制作映画で撮影や照明を担当していました。まだまだ駆け出しでしたね。それで本格的に技術を学ぼうと日本に戻ってきたんです。以前からデヴィッド・フィンチャー監督が好きで、クオリティの高い映像を撮りたくてCMやミュージックビデオの現場に入ってきたんです。
『その消失、』(c)「その消失、」製作委員会
Q:普段やっているCM撮影と比べると予算が格段にタイトだったかと思いますが、実際に長編映画の撮影をしてみていかがでしたか?
狩野:もともと映画の演出部にいたので、映画がどれだけ苦しい予算でやっているかは理解していました。企画やスタッフィングの段階から、少ない予算でどうやっていくかは常に念頭にありましたね。そういった意味ではCMとは全く違うアプローチだったので、全然違う感覚でやっていました。予算やスケジュールはかなり苦しかったですが、映画とCMではそもそも考えが違うので、CMと比較して考えるようなことはなかったですね。
Q:映画の現場で培ってきた経験が活かせたと。
狩野:ミュージックビデオや企業映像制作など、映画以外でも予算が少ないことはよくありました。そういうときは、自分でカメラも回して編集もし、美術をやることさえありました。今回の映画制作に関しては、そういう気持ちに立ち返った部分もあり、結構楽しみながらやれましたね。