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ジェームズ・キャメロン監督作品まとめ SFとアクションを駆使して人類に警鐘を鳴らし続ける
9.『アバター』(09)162分
『アバター』(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
22世紀、人類は地球から遠く離れた惑星パンドラで<アバター計画>に着手していた。この星の先住民ナヴィと人間のDNAを組み合わせた肉体<アバター>を創ることで、有毒な大気の問題をクリアし、莫大な利益をもたらす鉱物を採掘しようというのだ。この計画に参加した元兵士ジェイク(サム・ワーシントン)は車椅子の身だったが、<アバター>を得て体の自由を取り戻す。パンドラの地に降り立ち、ナヴィの族長の娘ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)と恋に落ちるジェイク。しかし彼はパンドラの生命を脅かす任務に疑問を抱き、この星の運命を決する選択を強いられていく……。
前作『タイタニック』から12年の時を経て作られたSF超大作。キャメロンのSF作品としては『ターミネーター2』以来18年ぶり。「観るのではない。そこにいるのだ。」のキャッチコピーのもと、多くの劇場で3D上映が実施された。これをきっかけに映画館の3D上映環境が加速度的に拡大、加えてIMAXデジタルシアターの増加も促し、3D映画ブームの火付け役となった。
体の動きをコンピューターに取り込むモーション・キャプチャーを進化させ、顔の表情や目の動きまでを取り込むパフォーマンス・キャプチャーを駆使してナヴィを表現。映画におけるCG技術をまたしても飛躍的に進化させた。『エイリアン2』でも見られた、宇宙船や宇宙基地施設、そして人が操縦するパワーローダーなど、キャメロン好みのSF要素がパワーアップして多数登場。圧巻の世界観を見せつける。
また、アクション演出の巧みさも健在で、クライマックスで描かれるナヴィと人間の戦闘シーンでは、キャメロンの手腕が遺憾なく発揮される。驚くべきは、空と地上で激しい戦いが繰り広げられるにも関わらず、戦況がどうなっているか、誰がどこで何をしているかが非常に分かりやすいこと。決してストーリーは置き去りにされず、戦況による今後の展開(への想像)や、キャラクターの状況(特に死)をしっかりと伝えることで、アクションの凄さと感情の揺さぶりを同時に体感させる。まさにスペクタクルとカタルシスを同時に生み出している。
第82回アカデミー賞では9部門でノミネートされ、撮影賞、美術賞、視覚効果賞の3部門で受賞。全世界での興行収入は約29.2億ドルと、2024年の現在でも堂々の1位を誇っている。
『アバター』デジタル配信中(購入/レンタル)3月27日(水)4K UHD コレクターズ・エディション(数量限定)発売 © 2024 20th Century Studios. 発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン
もっと詳しく:集大成にして新境地。ジェームズ・キャメロン『アバター』がインスパイアされた諸要素を探る
10.『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(22)192分
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』デジタル配信中(購入/レンタル)3月27日(水)4K UHD コレクターズ・エディション(数量限定)発売 © 2024 20th Century Studios. 発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン
神秘の惑星パンドラの一員となった元海兵隊員のジェイク(サム・ワーシントン)は、ナヴィの女性ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)と家族を築き、子供たちと平和に暮らしていた。再び人類がパンドラに現れるまでは…。神聖な森を追われた一家は、“海の部族”の元へ身を寄せる。だが、この美しい海辺の楽園にも、侵略の手は迫っていた…。
全5作が想定されている『アバター』シリーズの第2作目。前作から更に13年の時を経て作られた本作では、パフォーマンス・キャプチャーとCGの描画能力が大幅に向上。特に“水”の表現は、HFR(ハイ・フレーム・レート)の効果も相まって、もはや本物にしか見えない出来映え。そのあまりにリアルな映像は、まるで惑星ナヴィに行って撮影してきたネイチャー・ドキュメンタリーのよう。
また、キャメロン映画の特徴である“強い女性・母親像”は本作でも健在。ネイティリにしっかりと受け継がれている。特にラスト付近でのネイティリは、『エイリアン2』のリプリー、『ターミネーター2』のサラ・コナーを凌ぐほどの、鬼神の如き活躍を見せつける。
本作は全世界で約23.2億ドルの大ヒットを記録、歴代興行収入の第3位に堂々ランクインした。シリーズ続編の製作も決定している。
もっと詳しく:『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を生み出した映像革命とは?その最新技術に迫る(前編)
『オッペンハイマー』(23)でアカデミー賞を獲ったクリストファー・ノーランは、「原子爆弾を作ったオッペンハイマーの見てきた世界を観客に体感してほしい」と語り、高画質のIMAXフィルム撮影という手法を選択した。アプローチこそ違えども、この姿勢はキャメロンにも共通するように思われる。エンターテインメントの形を借りながら、SFやアクションで観客をスクリーンに釘付けにし、3DやHFRで観客を没入体験へと誘う。そうまでして訴えるものは、“テクノロジーに依存しすぎている人類への警鐘”という一貫したテーマだ。
豪華客船から核兵器、そしてAIまで、人類が生み出したテクノロジーが人類を危機に陥れる。ジェームズ・キャメロンという映画監督は、SFとアクションを駆使して人類に警鐘を鳴らし続けているのだ。
参考資料:
「ジェームズ・キャメロン 世界の終わりから未来を見つめる男」著:レベッカ・キーガン 訳:吉田俊太郎 フィルムアート社
「SF映画術 ジェームズ・キャメロンと6人の巨匠が語るサイエンス・フィクション創作講座」著:ジェームズ・キャメロンほか 訳:阿部清美 DU BOOKS
文:香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。