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劇場版『スター・トレック』を生んだ特撮スタッフの奮闘と彼らが残したもの 後編

(c)Photofest / Getty Images

劇場版『スター・トレック』を生んだ特撮スタッフの奮闘と彼らが残したもの 後編

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FGC社とアポジー社、制作スタイルの違い



 FGCとアポジーの共同作業には大きな問題があった。FGCは、RA&Aから返却してもらった65mm 5P(パーフォレーション)用の機材を用いるが、アポジーは旧ILM時代からのビスタビジョン(35mm 8P)で作業していたからだ。そこでアポジーは、急遽65/35mm兼用のオプチカルプリンターを開発した。


 またミニチュアの撮影法(*3)にも違いがある。トランブルはブルーバック合成を徹底的に嫌うため、ミニチュアをシルエットにして白バックで撮影したものと、逆に黒バックで露出過多に撮影したハイコントラストフィルムのネガを組み合わせて、トラベリングマットを抽出する方法を用いていた。


 一方、アポジーは旧ILMの流儀に従い、ブルーバック合成を採用している。また、同社のエンジニアであるジョナサン・エルランドが、新しいブルーバック合成技術を次々と開発している最中だった。



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 そこで作業をシーンごとに分担することにより、極力同一画面における作業を減らした。アポジーの担当シーンは、映画冒頭のクリンゴン帝国の戦艦(*4)、宇宙ステーション・イプシロン9、光子魚雷(*5)、転送装置、エンタープライズのブリッジ内に潜入したヴィジャーの探査体、及び全てのヴィジャーの外部ショットなどである。


 これ以外をFGCが担当することになった。特にエンタープライズの外観は、背景色が映り込みやすい塗料で塗装されたため、ブルーバックの反射でマットに穴が空く危険性が考えられた。そこで白バック/黒バック式のFGCが全て撮っている。


 またヴィジャーの周りを囲む青い雲状物体(*6)も全て担当した。その内部にエンタープライズ号が入って行く長いシーン(*7)は、『2001年宇宙の旅』のスリットスキャンを連想させるが、新たな方法で撮影されたものだ。これはエアブラシで描かれたモノクロの絵を、コンプシーと呼ばれるモーションコントロール式のマルプレーンカメラで、20~50回ほど繰り返し多重露光されたものである。


*3 トランブルの担当したショットには、フレームの外から光が差し込んで来る独特の効果が発見できるが、これは意図的に作られたものだ。その手法は、レンズの先に小さなアルミホイルを置き、ミニチュアの電飾のみを撮影して、これを普通にライティングした映像(ビューティーパス)と重ねるというものだ。この画面外フレア効果は『未知との遭遇』や『ブレードランナー』(82)でも見られる。筆者は20代のころ、この効果をCGで再現し、何度かCMで使っている。



*4 ヴィジャーに攻撃されてクリンゴンの戦艦が消滅する際の稲妻状の光は、手描きアニメやCGではなく、テスラコイルを用いた本物の放電が使用された。この放電は、劇中の随所に用いられている。だがアポジーのスタジオは、ヴァン・ナイズ空港の近くにあったため、電波障害が発生して苦情が来た。この問題は、周囲を金網で覆うことで解決している。


*5 光子魚雷のエフェクトは、アルゴンレーザーとモーションコントロールカメラを組み合わせて作られた。レーザーは他にも、転送装置の光や、ヴィジャー上空の膜状の雲などにも使われており、他の作品でも『スペースバンパイア』(85)などに使用されている。


 レーザーは、ワームホールの表現でも使われている。これはレーザービームを、ガルバノスキャナーで振動する鏡に反射させてリア・プロジェクション用スクリーンに投映し、簡易モーションコントロールカメラで6m前後させながらトンネル状の空間を作っている。振動のパターンは、ガルバノスキャナーをオーディオシンセサイザーに繋いで、オシロスコープの原理で発生させている。元の色はアルゴンレーザーの青緑だったが、オプチカル処理でオレンジ色に変更された。


*6 この場面を担当したアリソン・イェルザは高く評価され、『ブレインストーム』でVFXスーパーバイザーに起用されている。


*7 この場面のヒントになったのは、NFB(カナダ国立映画局)が制作した教育映画『Universe』(1960)だ。スタンリー・キューブリックが『2001年宇宙の旅』の参考用に繰り返し鑑賞したことで有名な作品である。



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