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劇場版『スター・トレック』を生んだ特撮スタッフの奮闘と彼らが残したもの 後編

(c)Photofest / Getty Images

劇場版『スター・トレック』を生んだ特撮スタッフの奮闘と彼らが残したもの 後編

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ミニチュアの問題



 宇宙船などのミニチュアを作り直す時間はなかったため、RA&Aの指揮下で制作していたマジカム社のモデルを、ほぼそのまま使用している。ただしトランブルは、メインのエンタープライズについては納得がいかなかったようである。それはこの機体がテレビ版を踏襲した、ツルンとしたデザインだったからだ。


 ミニチュアの宇宙船を巨大に見せるためには、『2001年宇宙の旅』(68)や『未知との遭遇』のように、複雑な凹凸のディテールを作り込む方法が取られる。だがそれだと、滑らかな表面が特徴のエンタープライズの雰囲気を壊してしまう。そこでトランブルは1色だったミニチュアを再塗装し、細かなパネルの集合体のように、微妙なシルバーやパールホワイトなどの違いで塗り分けた。



 もう1つは電飾の追加である。通常スペースオペラ系の映画に登場する宇宙船は、光源となる恒星が近くに無くても、何となくどこからか照らされている。だがトランブルは、「太陽系を離れた宇宙船は真っ暗になってしまうはずだ」と律儀に考え、エンタープライズ自体が船体を照らすようなライトを加えたのだ。


 それでもミニチュアのサイズが不足していたと、トランブルは不満を感じていた。彼が『2001年宇宙の旅』で扱っていたディスカバリー号のミニチュアは、全長16.2mもあった。これに対しエンタープライズは2.1mしかなく、被写界深度の浅い65mmカメラ(*2)では苦労を強いられるのだ。


*2 ここで言っているミリ数はフィルムの幅のことである。65mmフィルムは、35mmフィルムよりもイメージサークルの大きなレンズを必要とするため、同じF値では被写界深度が浅くなる。ピントのボケはミニチュアを大きく見せるには大敵で、必ずパンフォーカス(ディープフォーカス)で撮影する必要がある。そのため、サイズの小さなミニチュアをパンフォーカスで撮るには、レンズを極力絞り、その分だけ照明の光量を上げたり、1コマの露出時間を長くするなどの工夫が強いられる。



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