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『アンドロメダ…』パンデミックを予言!?未知の病原体と対峙するハードSF (後編)

(c)Photofest / Getty Images

『アンドロメダ…』パンデミックを予言!?未知の病原体と対峙するハードSF (後編)


スプリットスクリーン



 編集面で緊迫感の演出に貢献したのが、スプリットスクリーン(分割画面)の多用である。実はこの映画のオリジナル技法ではなく、『グラン・プリ』(66)、『華麗なる賭け』(68)、『絞殺魔』(68)、『ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間』(70)、そしてブライアン・デ・パルマ監督の『Dionysus in '69』(70)や『ファントム・オブ・パラダイス』(74)、『悪魔のシスター』(72)、『キャリー』(76)など一連の作品。邦画でも岩内克己監督の『グアム島珍道中』(73)や、市川崑監督の『女王蜂』(78)といったように、60~70年代(*7)には世界各地で多用された手法だった。


*7 この時代にスプリットスクリーンが流行した背景には、博覧会の展示映像における、複数プロジェクターを用いるマルチスクリーンの影響が大きい。例えば、ニューヨーク世界博(64/65)の「IBM館」で上映された、チャールズ&レイ・イームズ夫妻による22面作品『Think』。フランシス・トンプソンアレクサンダー・ハミッドによる、ニューヨーク世界博「ジョンソンワックス館」の3面作品『To Be Alive!』や、モントリオール万国博(67)「CPRコミンコ館」の6面作品『We Are Young!』(オーファンフィルム: 権利者不明フィルム)。同じくモントリオール博で、NFB(National Film Board of Canada: カナダ国立映画庁)ローマン・クロイターコーリン・ローヒュー・オコナーらが共同で監督した、「ラビリンス館」の十字5面作品『In the Labyrinth』(博覧会当時は単に「第3室」と呼ばれていた。他にL字2面の 「第1室」があった)などが代表例である。市川崑監督も、日本万国博(70)「日本館」の8面作品『日本と日本人』を手掛けている。



音楽



 音楽を担当したギル・メレは、彫刻家、画家、ジャズのサックス奏者、作曲家という多彩な顔を持つ人物で、1959年から電子音楽も取り入れてきた。映画やテレビドラマの仕事も多く、ロッド・サーリングの『四次元への招待』(70~73)や『600万ドルの男』(73~78)などを手掛けている。


 本作には全編電子音が用いられているが、意外にも当時話題だったモーグやアープなど、有名メーカーのシンセサイザーは使用されておらず、全てメレ自身が本作のために自作したパーカッション・シンセサイザー「Percussotron III」で演奏されている。これは、個々に独立した設定を可能にする8つのトリガーパッドを備えた、8ボイスのアナログシンセサイザーだった。


 メレは、なぜオリジナル楽器を開発する必要があったかについて、「新しい音階スケールの探求や、既成楽器の排除などを目的としていたからだ」と語っている。このように、1本の作品のために専用の楽器や、新しい演奏法などを作ってしまう姿勢は、現在のハリウッド映画よりも野心的(*8)と言えよう。


*8 この時代のSF映画は、音楽もかなり尖っていた。例えばジェリー・ゴールドスミスは、『猿の惑星』(68)で様々なパーカッションと金管、弦、サイレン、電子ノイズなどを組み合わせ、12音技法や不協和音を用いて異世界を表現した。さらにトム・オーバーハイムに特別にリングモジュレーターの開発を依頼している。また自ら、ミニモーグアープ2500アープ・ソリーナなどのシンセサイザーを購入し、『いれずみの男』(69)、『2300年未来への旅』(76)などに採用した。


 またゴールドスミスに協力していた、ハリウッドにおけるモーグシンセサイザーの先駆者であるポール・ビーヴァーは、バーニー・クラウスと組み、『ローズマリーの赤ちゃん』(68)や『いれずみの男』、『続・猿の惑星』(70)などにモーグサウンドを提供している。


 さらに『惑星ソラリス』では、エドゥアルド・アルテミエフがソ連で開発された光学式シンセサイザーの、「ANSシンセサイザー」を使用していた。



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