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『JFK』仕組まれたバッシング、オリバー・ストーンが挑んだケネディ暗殺事件 前編

(C)2016 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

『JFK』仕組まれたバッシング、オリバー・ストーンが挑んだケネディ暗殺事件 前編

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『JFK』をオールスター映画にせよ!



 脚本の第一稿が書き上がると、次はキャスティングだ。ストーンが候補に挙げたのは、ギャリソン役にハリソン・フォード、デニス・クエイド、ジャック・ニコルソン、アレック・ボールドウィン、ジーン・ハックマンらである。年齢を幅広く考えていたこともあって、若手からベテランまでが候補に上がった。


 やがてストーンのイメージが固まってくると、ゲーリー・クーパーやジェームス・スチュワートのようなアメリカの良心を象徴する俳優が相応しいように思えてきた。そこから浮上するようになった名前が、ケヴィン・コスナーである。他にもマイケル・ダグラス、ロビン・ウィリアムズ、マイケル・キートン、メル・ギブソン、ジョン・マルコビッチ、ロバート・デ・ニーロなどの名前も上がった。


 第一候補としてハリソン・フォードとケヴィン・コスナーに脚本が送られた。90年代のゲーリー・クーパーとジェームス・スチュワートに該当するのは、この2人だと判断したわけだ。脚本を読んだ2人の反応は全く同じだった。


 『推定無罪』(90)の撮影を終えたばかりのフォード(この作品も主役の座をコスナーと争った)は、全く興味を示そうとしなかった。一説によると、すでにCIA情報分析官ジャック・ライアンを演じる『パトリオット・ゲーム』(92)への出演が決まっていたこともあり、CIAがケネディ暗殺に加担したなどと主張する映画に出られるわけがないと話したという。また、脚本を放り投げて、「陰謀があったと思ったことはない」と呟いたと、まことしやかに語られたこともあったが、真偽の程は定かではない。


 一方、ケヴィン・コスナーも同様に断りを入れてきた。その理由は、実在の人物を演じることの難しさを挙げた。もっとも、彼はすでに『アンタッチャブル』(87)で酒類取締局捜査官エリオット・ネスを演じていたが、このときも実像とのギャップをどう埋めるかに悩んだ。それに、監督作『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(90)に続いて『ロビン・フッド』(91)の撮影に入っていたために、その後の3、4か月は充電期間にあてることを妻と約束していた。



 しかし、ストーンは諦めなかった。むしろ獲物をはっきり識別したと言って良い。コスナーこそがギャリソンに相応しいという確信と共に。ロンドンまで『ロビン・フッド』撮影中のコスナーを訪ねて説得にあたり、脚本への不満をコスナーが述べると、2、3週間もすると改訂稿を持って再訪した。やがて彼と妻の休暇約束問題が出演の障壁であることを突き止めると、原作と脚本を彼の妻に送りつけるという掟破りの方法で、味方につけてしまった。その結果、「これは絶対やるべき」と、コスナーの妻までが出演を説得する役目を担うことになった。


 コスナーは、ギャリソン本人はもちろん、彼を批判する者にも会い、自分がどう演じるべきかを探った末に、1991年1月、『JFK』への出演を正式に了承した。その2か月後、第63回アカデミー賞で『ダンス・ウィズ・ウルブズ』は作品賞、コスナーの監督賞をはじめ7部門を受賞。キャリアのピークを迎える瞬間を予感していたかのように、『JFK』はコスナーをキャッチしたのだ。


 主役が決まると、ワーナー側はすっかり安心してしまい、助演陣にはギャラの高い俳優を起用することを好まなかったが、ストーンは断固として名のある俳優たちの起用にこだわった。というのも、『JFK』を『史上最大の作戦』(62)のようなオールスター映画にしようと構想していたからだ。ストーンの演出に加えて凝った映像と編集を駆使するとしても、映画の大半は証言調査と裁判である。観客を退屈させずに、なおかつ現在と過去が入り組む複雑な物語を一度見ただけで記憶させるには、顔の知られた俳優たちを起用するのが最良である。それに興行的な安心材料にもなる。


 脇役たちも、オールスターキャストを念頭に様々な可能性が模索された。ドナルド・サザーランドが演じたミスターX役は、マーロン・ブランドが検討されたこともあった。クレイ・ショー役にはグレゴリー・ペック、マイケル・ダグラス、ポール・ニューマン、ピーター・オトゥール、ロイ・シャイダーなど大物が候補に上ったが、最終的に演じたのはブレイク前のトミー・リー・ジョーンズである。 

 


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 本作でアカデミー助演男優賞にノミネートされることになる彼は、2年後の『逃亡者』(93)で同賞の受賞を果たした。まさに『JFK』への出演が大きな転機となったわけだ。当初、別の役で検討されていた彼は、やがてストーンが「白髪にできるのなら、トミー・リー・ジョーンズでクレイ・ショーってのはどうだ?」と口にしたことから、この大役を手にした。大御所俳優を想定していただけに周囲は意外な人選に思ったが、謎めいたクレイ・ショーを怪演することになるジョーンズは抜擢に応えて強烈な印象を残すことになる。


 リー・ハーヴェイ・オズワルド役はチャーリー・シーン、トム・クルーズらストーンのベトナム映画の主役たちを配する案もあったが、こちらもクレイ・ショーと同じく実力派の若手俳優からの抜擢となった。ゲイリー・オールドマンである。 


 そして、ジャック・レモン、ウォルター・マッソー、ケヴィン・ベーコン、ジョン・キャンディ、ジョー・ペシといった主役級の俳優たちの出演も決まったが、出演料が高騰する恐れがあったことから、ストーンは全員に均一額での出演を了承させた。


 というのも、4,000万ドルに膨れ上がった製作費をこれ以上オーバーすれば、ワーナーでの第1作となるだけに今後の悪影響が心配されたからだ。そういった点で、ストーンは計算高いビジネスマンでもあった。実際、ハリウッドには予算超過で悪評が立ち、次回作の目処が絶たない監督たちが大勢いた。だからといって、ストーンは単に製作費をケチっていたわけではない。潤沢に予算を投入したい場面があった。ケネディが暗殺される瞬間である。



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