2021.03.20
過去シリーズの“らしさ”を踏襲したアクション演出
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第1話で観る者のテンションに火をつけるのは、冒頭で展開する大迫力のスカイアクションだろう。LAFという謎の犯罪組織に連れ去られた軍人を救出すべく、ファルコンは空飛ぶ飛行機に偵察に向かい、壮絶なバトルを繰り広げる。『X-ミッション』(15)を彷彿させるウイングスーツ集団とのハイスピードな空中戦には、目を見張る。
ここで注目すべきは、スケール感抜群でありながらも、過去の『キャプテン・アメリカ』シリーズを踏襲したリアルな実践スタイルの戦闘シーンになっていることだ。ドローンの「レッド・ウィング」で機体にレーザーで穴を開け、そこから飛び込むと間髪入れずに敵との殴り合いが始まる。このスピード感と重量感あるアクションの合わせ技は、まさに『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(14)的ではないか。その後のシーンで描かれる、ウィンター・ソルジャーの暗殺者としての無駄のない動きを追求したアクションも、その好例といえる。ファルコンとウィンター・ソルジャーのそれぞれの戦闘スタイルの違いは見せつつ、リアルファイトの前提を崩さない設計。本作の監督を務めたのは、『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』(17~)のカリ・スコグランドだが、非常に的確にシリーズの“匂い”を抽出し、映像に盛り込んでいる。
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』© 2021 Marvel
そして、観る者の心をたぎらせるのは、往年のハリウッド仕込みのアクション作品の要素をもふんだんに盛り込んでいるところ。パイロットが跳弾を食らった結果飛行機がコントロールできなくなる、悪者は容赦なく成敗する(これまでのMCU作品と比べても、かなり明確に敵を殺害している。そしてその様子をカラリと描く)、自分を追いかけてくるミサイルを逆利用して敵を攻撃する、果ては謎の日本人の登場や、デートの際に登場するゲーム「バトルシップ」に至るまで、アメリカンな演出が顕著だ(ちなみにエンドロールには「相棒」や「腐敗」の日本語が登場。初期の『ダイ・ハード』的なエッセンスも感じられる)。
なお余談だが、カウンセリングのシーンでカウンセラーが示すノックのジェスチャーは、Non Official Cover(非公式諜報員)のことだろうか。このネタは、『名探偵コナン』でも描かれていたものだが、こうした専門用語・隠語の使い方もミリタリーアクション感の底上げになっている。『ワンダヴィジョン』でシット・コムの要素を明確に入れてきたMCUだけに、これらの細かな見せ方も、「●●風」にするための用意周到なアプローチとみることができる。
アクションとドラマのバランスも良く、今後につながる謎もちりばめられた『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』第1話。そして恒例の「次につながる」展開も最終話にはあるに違いないだろう。『ワンダヴィジョン』が全9話だったのに対し本作は全6話ということで、また密度やスピード感も異なってくるだろう。随所に光る「MCUらしさ」に身もだえしつつ、ふたりのヒーローの邂逅と化学変化に期待したい。
文:SYO
1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」 「シネマカフェ」 「装苑」「FRIDAYデジタル」「CREA」「BRUTUS」等に寄稿。Twitter「syocinema」
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