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『2番目のキス』伝統的なアメリカ映画の後継者・ファレリーに、映画の女神が微笑んだ瞬間

(c)Photofest / Getty Images

『2番目のキス』伝統的なアメリカ映画の後継者・ファレリーに、映画の女神が微笑んだ瞬間

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『2番目のキス』あらすじ

キャリアウーマンのリンジーは、ある日偶然出会った数学教師ベンと出会い、恋に落ちる。ところが彼は少年時代から地元の野球チーム、レッドソックスの熱狂的なファンで、大リーグの開幕後、生活のすべてがレッドソックスの応援になってしまい……。



 ピーター・ファレリー監督の『グリーンブック』(18)がゴールデングローブの作品賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞した時、「いったい何が起こっているのだ?」と思った人は少なくないはずだ。あの『メリーに首ったけ』(98)『新・三バカ大将 ザ・ムービー』(12)のファレリーだぞ。ひとつ前の映画は『帰ってきたMr.ダマー バカMAX!』(14)だ。ついにアカデミー賞まで獲ってしまった時には「同名異人なんじゃないか!?」と思ったはず。際どいネタ選び、下品なジョーク、くだらないギャグ、一部の観客から熱い支持は受けても、賞レースなどに絡むことは無いのがファレリーだ。それはファレリーの映画を愛していたファンだからこその、率直な感想だったのではないだろうか。


 ちなみにファレリーの大ファンである筆者は、『グリーンブック』の公開初日に劇場へ駆け付けて二回続けて鑑賞した。満員の観客と一緒にファレリーを観て笑って泣く、まさかこんな日が来るなんて…。それはファレリーを孤独に支持し続けていたファンにとって、夢のような体験だった。なにしろ筆者は、ファレリー兄弟こそが「伝統的なアメリカ映画の正当な後継者」と、長年言い続けてきたのだ。


※本記事は物語の結末に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。


Index


原作はイギリスのベストセラー小説



 際どいテーマを、馬鹿馬鹿しくも愛すべきコメディに仕立て上げるのがファレリーだ。『キングピン ストライクへの道』(96)では、アーミッシュを笑いのネタにし、『ふたりにクギづけ』(03)では、結合双生児の活躍を描き、『メリーに首ったけ』では、キャメロン・ディアスを下品なギャグのるつぼに容赦なく落とす。


 そんな彼らのフィルモグラフィの中でも、『2番目のキス』(05:Fever Pitch)は比較的オーソドックスな設定で刺激も少なめだ。原作はイギリスで発行されベストセラーになった「ぼくのプレミ・アライフ」(Fever Pitch: A Fan's Life)という小説。イングランド・プレミアリーグに属するアーセナルFCの熱烈なサポーターを描いたこの作品は、1997年にコリン・ファース主演で映画化もされている。この設定を、アメリカのメジャーリーグ、ボストン・レッドソックスに置き換えたのが本作だ。


『2番目のキス』予告


 主演を務めるドリュー・バリモアが製作総指揮も兼ねる形で、当初は監督不在のまま企画が進行していた。脚本はローウェル・ガンツとババルー・マンデル。二人はこれまでロン・ハワードやペニー・マーシャル等の作品に参加している事からして、血筋の良い事が分かる大物脚本家だ。そして、脚本もメインキャストも決定しお膳立てがほぼ整った状態から、ファレリー兄弟が参加することとなった。彼らが、製作はおろか脚本や事前のリライトにも参加していない作品は珍しい。大物脚本家に敬意を示したのか、いつもの下品なギャグも控えめで、ファレリーも「初めて女性に好かれる作品だ」と言っている。ちなみにファレリー兄弟もレッドソックスの熱狂的なファンだ。




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