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『ブレインストーム』VRを先取りしたダグラス・トランブルの野心作(前編)

(c)Photofest / Getty Images

『ブレインストーム』VRを先取りしたダグラス・トランブルの野心作(前編)

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 VFX界の巨匠であるダグラス・トランブルが、2022年2月7日に亡くなった。そこで今回は、彼が監督した2本の長編劇映画の内、『ブレインストーム』(83)について述べる。VRを先取りしたガジェットや、美しい臨死体験の描写、さらには新しい上映方式への挑戦など、非常に野心的な企画だった。だが、その完成までには紆余曲折あり、トランブルがやりたかったことと、実行できたことに大きな隔たりがあった作品である。


Index


あらすじ① 人間の知覚を他人に伝送する「リアリティレコーダー」



 天才的科学者のリリアン・レイノルズ博士(ルイーズ・フレッチャー)が率いる研究チームは、人間の知覚を他人に伝送可能なデバイス「リアリティレコーダー」を開発していた。彼女の助手には、マイケル(クリストファー・ウォーケン)博士を筆頭に、軽薄なゴーディ(ジョーダン・クリストファー)や、最年長のハル(ジョー・ドーシー)がいた。そしてプロトタイプのテストをマイケル自身が行い、味覚や嗅覚、聴覚などのクオリア(主観的な体験の質感)を、リアルに他人へ伝送し、テープに記録も可能なことを確かめる。


 翌日、彼らが属する企業のトップであるアレックス(クリフ・ロバートソン)は、マイケルの妻で工業デザイナーでもあるカレン(ナタリー・ウッド)を呼び出し、プロジェクトへの参加を働きかける。しかしマイケルとカレンの夫婦関係は冷め切っていた。


 リリアンとマイケルたちは、アレックスに実験成果を報告しに行く。アレックスは、秘かに開発されたマイクロチップを渡し、改良版を自分に試して欲しいと言う。マイケルはそのチップを用い、ヘルメット・サイズに小型化したバージョンを開発。それを装着したゴーディが様々な体験を記録し、そのデータを脳内再生したアレックスは、まるで自分がその場にいるような感覚に驚き、役員会で報告するためデモテープの作成を命ずる。


『ブレインストーム』予告


 カレンは、ヘッドホン程度までに小型化したデバイスを設計し、役員向けデモンストレーションに間に合わせた。会議室にズラリと並んだ役員たちは、全員がその疑似体験の生々しさに感動する。しかしその役員の中に、1人の軍人も入っていた。アレックスは数日後、自分の別荘で実験の成功を祝うパーティーを催す。その最中、ハルがリリアンとマイケルを別室に案内すると、そこには多くの軍関係者が座っていた。


 アレックスは、軍のバーティ大佐(アイラ・デイヴィッド・ウッド3世)とマークス博士(ドナルド・ホットン)を紹介する。だがリリアンは、軍への協力を激しく拒む。アレックスとマイケルが説得を試みるが、リリアンは過度のストレスで心臓に負荷がかかり、化粧室で苦しみ出す。


 ゴーディはハルに、自分のセックスを記録したテープを勧める。ハルは深夜にデータを編集し、絶頂の瞬間だけをループさせたテープを作って自宅に持ち出した。


 作業中のマイケルとリリアンたちの所へ、最新デバイスを完成させたカレンがやって来る。しかしマイケルはそのデバイスを無視して、彼女の脳からデータを記録した。それを再生したマイケルは、以前の夫婦喧嘩が再生されたことに腹を立て、実験室を出て行ってしまった。リリアンは、リアリティレコーダーがリアルタイムの体験だけでなく、人生の過去の記憶まで鮮明に記録できると気付く。


 マイケルは自分たちがラブラブだったころの記憶を、可搬式リアリティレコーダーで記録し、「二人の想い出アルバム」のようなテープを編集してカレンに渡す。彼女はその内容に感動し、夫婦関係はたちまち修復された。


 翌朝ハルの妻から緊急連絡が入る。マイケルが彼の自宅を訪れると、ハルが痙攣していた。彼は一晩中、セックステープを再生し続けていたのだ。ハルは研究所で経過観察を受けたが、明らかに肉体的に若返っていた。


 リリアンたちの研究は、秘かに別室で軍によりモニターされていた。ハルはこちらの研究グループに呼び出され、フライトシミュレーターを用いた実験が行われる。するとリアリティレコーダーを用い、10Gという過酷な環境でも、精神力だけで戦闘機の操縦やミサイル攻撃が行えることが実証される。





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