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『ブレインストーム』VRを先取りしたダグラス・トランブルの野心作(前編)

(c)Photofest / Getty Images

『ブレインストーム』VRを先取りしたダグラス・トランブルの野心作(前編)

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パラマウントとの交渉決裂



 シナリオは、ロバート・スティッツェルとフィリップ・フランク・メッシーナによって改稿され、『ブレインストーム』と題される。トランブルの計画では、ショースキャンの効果を明確化すべく、劇中のリアリティレコーダー再生シーンだけに使うことにした。基本的に映画の通常部分は、従来の24fpsで撮影し、テレシネのプルダウンに似た手法で60fpsにフレームを増やす。だが、あくまでも疑似60fpsに過ぎないため、本当に60fpsで撮影されたリアリティレコーダーのショットとは、画質に差が生じてしまう。この違いを体験してもらうことで、観客がリアリティレコーダーを装着しているような感覚を味わうというものだった。


 だが大きな問題として、60fpsで上映できる70mmプロジェクターを、各映画館に設置してもらう必要がある。だがパラマウントが見積もると、各劇場が1スクリーンあたり5万~10万ドルの設備費を強いられることが分かり、計画は白紙に戻ってしまった。パラマウントは、普通の映画として制作継続を望んだが、トランブルは「ショースキャンが使えないなら意味がない」として、『ブレインストーム』の企画を棚上げにしてしまう。


 その後トランブルは、最初のショースキャン映画となる12分間の短編『Night of Dreams』(78)を作り、実用化に向けた試験を繰り返していた。そこへパラマウントは、劇場版『スター・トレック』(79)のVFXをトランブルに命じる。彼は、ショースキャン開発に専念したいため断り、怒ったパラマウントはFGCから65mmカメラやオプチカル・プリンターなどの機材を全て引き上げ、ロバート・エイブル&アソシエイツ(以下RA&A)に貸し出してしまった。


 だが諸々の事情でRA&Aは降板を強いられる。後始末を命ぜられたトランブルは、ダイクストラと共に急ピッチで『スター・トレック』のVFXを仕上げる。だがこの作業を引き受ける代わりに、パラマウントとの専属契約の解除と、何かと足枷となっていたFGCの閉鎖を要求した。


 こうして80年1月にFGCは解散し、トランブルとユーリシッチは私物以外を全て売り払う。そして新しく、マリナ・デル・レイにエンターテインメント・エフェクツ・グループ(以下EEG)を設立した。





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