前作と設定は同じだが、真逆の印象を与える脚本の妙
『ターミネーター2』がなぜこれほどの成功を収めたのか? 技術面での進化も大きいだろうが、やはり1番はストーリーの面白さにあるだろう。今さら説明するまでもないが、本作では「前作の敵が味方になる」という斬新なアイデアを用いつつ、「家族映画」の要素まで取り入れ、まさかまさかの「泣かせる」クライマックスまで、ドラマ性を高めている。本稿では、前作『ターミネーター』と比較しつつ、『ターミネーター2』の魅力を掘り下げていきたい。
前作から約10年後、1994~95年のアメリカ・ロサンゼルス。前作でターミネーター、T-800(アーノルド・シュワルツェネッガー)から辛くも生き延びたサラ・コナー(リンダ・ハミルトン)だったが、未来に起きる核戦争の引き金となった企業を破壊しようとした結果失敗し、警察の精神病院に収監されてしまった。そんな中、人類の希望となる革命軍の未来のリーダー、ジョン・コナー(エドワード・ファーロング)を殺害しようと、再び未来から刺客が現れる。液体金属の身体を持つ最強のターミネーター、T-1000(ロバート・パトリック)だ。凶行を止めるべく未来の人類が選んだ一手は、T-800・モデル101型(シュワルツェネッガー)を過去に送ること。T-800とT-1000の死闘が、いま始まる……。
『ターミネーター2』(c)Photofest / Getty Images
『ターミネーター2』は、前作のフォーマットをほぼ採用する、というシンプルな(それでいて大胆な)ストーリーラインながら、多くの観客を震え上がらせたT-800を「最強の味方」として配置し、「見やすいのに新しい」という方法論を構築した。前作を鑑賞済みの観客であれば、話の展開をスムーズに追えると同時に、T-800の変わりぶりに新鮮なショックを受けるだろう。つまり、前作をある種の下敷き、前振りとして使ったところに本作の巧みさがある。
これが人間であれば敵から味方への転身に「ご都合主義」感が強まってしまうのだが、ターミネーターはあくまで機械。善人が使えば味方になり、悪人が使えば敵になる存在のため、観る者の中でハレーションは起こらない。実際『ターミネーター』では「完全に破壊されない限りは命令に従い続ける」要素が恐怖を存分にあおったのだが、本作では「何があっても守ってくれる」という頼もしさと変わる。設定は全く一緒なのに、受け取り方が真逆になる。このアイデアは、本作でしか機能しなかったものだろう。実に見事な采配と言わざるを得ない。
ここに「機械が心を理解する」という本作の“核”ともいえるテーマが加わると、物語は一気にヒューマンドラマへと傾く。前作で命を落としたジョンの父カイル・リースの代わりを、仇のはずのT-800が担うという勇敢なシナリオ。恐怖の対象だったT-800に同情し、感動するなど誰が予想しただろうか。28年経った今観ても、衝撃的な展開である。