1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. 天才マックスの世界
  4. 『天才マックスの世界』ビター・スウィート・シンフォニー
『天才マックスの世界』ビター・スウィート・シンフォニー

(c)Photofest / Getty Images

『天才マックスの世界』ビター・スウィート・シンフォニー

PAGES


コッポラ家との関わり



 ジェイソン・シュワルツマンは、ファントム・プラネットというインディーズバンドでドラムを務めていた。オーディションを受けるようジェイソン・シュワルツマンに促したのはソフィア・コッポラだった。フランシス・フォード・コッポラの妹タリア・シャイアは、『天才マックスの世界』の脚本を読み、息子のジェイソン・シュワルツマンに三本の映画を見ることを薦めている。『卒業』(67)、『狼たちの午後』(75)、そして『ハロルドとモード』(71)。いずれも『天才マックスの世界』が強く影響を受けている作品だ。タリア・シャイアの直感の正しさに唸らされる。これらの作品を見たジェイソン・シュワルツマンは、これまで音楽が与えてくれた特別な感覚と同じものを初めて映画から感じ取ったという。


 当時のオーディションの映像が残っているが、手作りのブレザー服を準備してオーディションに挑んだというジェイソン・シュワルツマンの姿が瑞々しい。当初“顔色の悪いミック・ジャガー”をマックス役にイメージしていたウェス・アンダーソンは、ジェイソン・シュワルツマンに会った瞬間に根本から意見を変えている。二人はお互いの履いているスニーカーの話や、ウィーザーの「ピンカートン」の素晴らしさを語り合うことで意気投合する。ジェイソン・シュワルツマンは、小さい頃に母親を亡くしているマックスの設定に強く共感したという。ジェイソン・シュワルツマンも父親を14歳のときに失っている。また、ウェス・アンダーソン自身も離婚家庭で育っている。『天才マックスの世界』で描かれた“母親の不在”というテーマは、25年の時を経て『アステロイド・シティ』に引き継がれることになる。



『天才マックスの世界』(c)Photofest / Getty Images


 コッポラ家との関係でいうと、フランシス・フォード・コッポラによる本作への感想も面白い。コッポラはマックスの中に、少年時代の自分を見たという。劇作家になりたかったコッポラは、望んでいたような才能が自分にはないと少年時代に感じていたと語っている。「『天才マックスの世界』を見たことはある?私はあの子供と同じだったんだ」。マックスは『地獄の黙示録』(79)のパロディのような演劇を上演している。ソフィア・コッポラやジェイソン・シュワルツマンとの関係に留まらず、ウェス・アンダーソンとコッポラ家は深いところで繋がっている。





PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. 天才マックスの世界
  4. 『天才マックスの世界』ビター・スウィート・シンフォニー