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『トゥモローランド』博覧会から紐解くディズニーランドのルーツ(前編)

(c)Photofest / Getty Images

『トゥモローランド』博覧会から紐解くディズニーランドのルーツ(前編)

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博覧会場を映像化する困難さ



 だが実際に、博覧会場を舞台としている映画は多くない。例えば1970年の「日本万国博」では、会期中にロケを行った山田洋二監督の『家族』(70)や、鳥居元宏監督の『三匹の牝蜂』(70)、井上梅次監督の香港映画『鑚石艶盗』(71)、湯浅憲明監督の『ガメラ対大魔獣ジャイガー』(70)、アニメーションで再現した『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(01)などがある。


 さらにフラッシング・メドウズ・コロナ・パークの、「ニューヨーク世界博」会場跡でロケした映画としては、『メン・イン・ブラック』(97)が有名だ。


 しかし、過去に行われた博覧会の雰囲気を、そっくり再現するには莫大な予算が掛かってしまう。例えば、1893年に開催された「シカゴ万博」と、その観光客を狙ったシリアルキラーの実話を描いたエリック・ラーソンの小説「悪魔と博覧会」は、何度も映画化やドラマ化が企画されながらも実現していない。その理由は、やはり経費的に問題があるからではないだろうか。


 今回、「ニューヨーク世界博」の会場を見事に再現させたのは、ILMを中心にHybrideやRodeo FXといったVFXチームの活躍があってのことだろう。ただ、全てがCGなのではなく、スペイン・バレンシアの芸術科学都市がロケ場所として使用された。ここにある未来的な建築物群は、数多くの映像作品に登場している。(*2)


*2 例えば、ナショナルジオグラフィックで放送された科学ドキュメンタリー『コスモス:いくつもの世界』(20)の最終回では、2039年のニューヨーク世界博が描かれる(https://natgeotv.jp/tv/lineup/prgmtop/index/prgm_cd/2723)。この背景の多くに、芸術科学都市で撮影された映像が用いられた。


あらすじ②



 時代は現代に移る。宇宙に憧れる天才高校生のケイシー(ブリット・ロバートソン)は、NASAのエンジニアであるエディ(ティム・マッグロウ)を父に持つ。しかしエディは、スペースシャトル計画の終了で失業が決まっていた。ケイシーはそれを何とかすべく、解体工事中のケネディ宇宙センターの第39A発射台に毎夜忍び込み、妨害工作を続けていた。その姿を監視していたアテナは、ケイシーのバイクのヘルメットに、最後となったピンバッジを隠す。翌日ケイシーは高校の授業に出る。教師たちは絶望的な未来について講義するが、誰一人として解決策を語らない。



『トゥモローランド』(c)Photofest / Getty Images


 その晩も発射台に潜入したケイシーは、ついに逮捕され、バイクは没収となる。だが彼女が留置場から保釈される時、警察から返却された私物の中に、見慣れないピンバッジを発見した。彼女がバッジに触れると、広大な麦畑が現れ、遠くには未来都市が見える。しかしエディが触れても、何も起きることはなかった。


 その未来都市を自転車で訪問したケイシーは、高くそびえる曲面で構成された建造物や、空中を走る列車、ジェットパックで飛び交う人々に目を奪われる。そして20光年先の星へ向かう宇宙船の乗員として招かれるが、乗り込む寸前にバッジの力が消え、現実に引き戻されてしまった。



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