ペシミスティックな未来感
「ニューヨーク世界博」が終わると、世界は悲観的ムード一色になっていき、「フューチュラマII」に代表されるオプティミスティックな未来感は描きにくくなった。次に開催された「モントリオール万博」(Expo'67)からは、難解かつ前衛的な映像で、社会に問題提起をする展示が増える。さらに世界的な公害問題から、環境をテーマとした「スポーケン万博」(Expo'74)や、第二次オイルショックの影響により、エネルギー問題を扱った「ノックスビル万博」(Expo'82)など、博覧会そのものが社会と直接向き合うようになっていく。
それは当時のSF映画にも色濃く表れており、『猿の惑星』(68)、『地球爆破作戦』(70)、『最後の脱出』(70)、『続・猿の惑星』(70)、『THX-1138』(71)、『赤ちゃんよ永遠に』(72)、『ソイレント・グリーン』(73)、『日本沈没』(73)、『ノストラダムスの大予言』(74)、『世界が燃えつきる日』(77)など、全面核戦争、AIの暴走、超管理社会、環境汚染、人口爆発、食糧危機、天変地異といった、黙示録的な未来感が全面に出て来るのだ。さらにこういった流れは、『ゾンビ』(78)や『マッドマックス』(79)などの登場で、ジャンルとして定着するようになった。
そのため「なぜ人々は、急にペシミスティックになったのか?」を映画のメインテーマとすることが、ブラッド・バード監督とデイモン・リンデロフによって話し合われた。
後編に続く
1982年に日本初のCGプロダクションJCGLのディレクター。EXPO'90富士通パビリオンのIMAXドーム3D映像『ユニバース2~太陽の響~』のヘッドデザイナーなどを経てフリーの映像クリエーター。NHKスペシャル『生命・40億年はるかな旅』(94)でエミー賞受賞。VFX、CG、3D映画、アートアニメ、展示映像などを専門とする映像ジャーナリストでもあり、映画雑誌、劇場パンフ、WEBなどに多数寄稿。デジタルハリウッド大学客員教授の他、女子美術大学専攻科、東京藝大大学院アニメーション専攻、日本電子専門学校などで非常勤講師。主要著書として、「3D世紀 -驚異! 立体映画の100年と映像新世紀-」ボーンデジタル、「裸眼3Dグラフィクス」朝倉書店、「コンピュータ・グラフィックスの歴史 3DCGというイマジネーション」フィルムアート社
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