オーディオ・アニマトロニクス
オーディオ・アニマトロニクスとは、ディズニーが生み出した造語であるが、これも「ニューヨーク世界博」の時に考案されたものだ。ウォルト・ディズニーは「イッツ・ア・スモールワールド」の他にも、フォード・モーター館や、ゼネラル・エレクトリック館の「カルーセル・オブ・プログレス」、イリノイ州パビリオンの「リンカーン大統領の感動の演説」といったアトラクションをプロデュースしていた。
この時に、WEDエンタープライズ(現ウォルト・ディズニー・イマジニアリング)社が開発したのが、精密な機械人形のオーディオ・アニマトロニクスだった。特に、「リンカーン大統領の感動の演説」では、人間そっくりに造形されたリンカーン大統領が演説する。これは高い評価を得たため、会期中の1965年に、2つ目の施設がディズニーランド内に設置された。
また「カルーセル・オブ・プログレス」も、1967年にディズニーランド内へ移設されている。これは過去から始まって、電化製品が充実した未来の生活までを、オーディオ・アニマトロニクスに演じさせるというショーだった。これを実現させるために、俳優の演技を電気機械式にリアルタイムで捕らえるハーネスを設計し、その信号を磁気テープに記録するシステム(*6)が開発された。今風に言えば、メカニカルセンサーを用いたモーションキャプチャー・システムである。
*6 この装置は、今一つ評判が良くなかったため、1969年には制御ボードからプログラミングする、デジタル動作入力システム“DACS(Digital Animation Control System)”が開発されている。
あらすじ④
アテナは怯えるケイシーに、「あなたは世界を救う最後の希望なの」と説得し、「あの世界に連れて行ってくれる人」というフランク(ジョージ・クルーニー)の家へと向かう。だがケイシーが寝ている間に、アテナは彼女を山中の路上に置き去りにして、そのまま去ってしまった。目覚めたケイシーは、ポツンと建つフランクの屋敷に向かう。いきなり番犬に襲い掛かられるが、ケイシーはすぐさまそれがホログラムだと見抜く。しかしフランクは、彼女を電気ショックで攻撃し、「あの夢のような世界は、単なる宣伝映像として頭に送られた幻覚に過ぎない」と、ケイシーを絶望させるようなことを言い、雨の降る夜も入室させない。
するとケイシーは、監視カメラのケーブルを辿ってフランクのいる部屋を見付け、庭に停めてあったホイールローダーに火を放って突進させた。慌てて消火に向かったフランクは、ドアを開けたままにしていたため、潜入に成功したケイシーに締め出されてしまう。ケイシーがフランクの棚を物色していると、ボロボロになった「ニューヨーク世界博」のパンフレットの横に、奇妙なライフル銃のようなものを見付ける。彼女がレバーを引くと、立体映像が出現した。そこに写っていたのはあの未来世界であり、幼い少年(11歳のフランク)とアテナが話していた。
『トゥモローランド』(c)Photofest / Getty Images
ケイシーが別室に入ると、そこにはビデオモニターがびっしり並んでおり、どれも災害や戦場、デモ隊と警官隊の衝突などといった、陰惨な情景を映し出していた。その中に、ずっと100という数字だけを表示し続けるモニターや、数字を減らして行くカウンターもあった。すると、地下通路から入出してきたフランクが現れる。彼は、「後60日程で人類は滅びるという計算を導き出したため、あの世界から追放されたのだ」と説明した。しかしケイシーが「自分の運命は自分で切り開くものよ」と発言した途端、映像が青空に変わり、モニターの数字も100から僅かに下がった。
するとその直後、ニックスが派遣したAAの暗殺部隊がフランクの屋敷を包囲し、ケイシーの引き渡しを求める。しかしフランクは、屋敷内にAA達を撃退する様々な仕掛けを施していた。そしてバスタブに施したロケットエンジンで脱出すると、そこにアテナが運転する車がやって来る。