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『ウエストワールド』AIを予見しCG技術の黎明となった、マイケル・クライトン長編監督デビュー作(後編) ※注!ネタバレ含みます
『ウエストワールド』あらすじ⑦
ピーターを見失ったガンスリンガーに、彼は松明で火を放った。炎は一瞬でガンスリンガーの全身に拡がり、激しく燃え上がる。今度こそ勝利を確信したピーターは、地下に降りていく。すると牢に鎖で繋がれ、助けを求める女性を見付ける。ピーターは彼女を助けて水を与えるが、実はロボットだったようでショートして火花を散らし、シャットダウンしてしまう。
ショックを受けて呆然としたピーターの背後から、またも黒焦げになったガンスリンガーが襲い掛かるが、そのまま倒れ込んでしまった。それでもむっくり起き上がるが、マスクが外れて内部のメカがむき出しになっていた。だが動けたのはそこまでだったようで、火花を散らしながら静止してしまう。ピーターは、疲労とショックで地下牢の階段に座り込み、デロスのCMのキャッチフレーズだけが虚しく頭に蘇る。
評価と興行成績
クライトンの映画は小説と違い、オリジナル脚本はどうしても詰めが甘い。例えば、ピーターが暴走したガンスリンガーから逃れるため、ウエストワールドから脱出する際、馬を使用している。この馬も制御を失ったロボットのはずだが、なぜピーターの言うことに従うかについては説明されていない。またピーターは、ローマンワールドの井戸が制御フロアの出入り口だということを、どういう訳だか知っている。
しかしどうしても矛盾を感じるのは、ガンスリンガーが修理中のロボットに化けていたピーターを見付けられなかった点だ。ガンスリンガーは、その直前までピーターの足跡から発せられる赤外線を目標にしていた描写があるにも係わらず、この時だけは彼の熱を感知しないのだ。
また、地下牢にいた女性を助けるくだりも、このままではまったく無意味だ。これならば、「ロボットの弱点は水」という伏線にするのが当然で、黒焦げのガンスリンガーに水を浴びせ、ショートさせて終わらすべきなのではと思われる。実際、巻上機で手足が引き裂かれるという案も試されたらしいが、バカバカしく見えてしまったということで却下された。
また演出もモッサリしていて緊張感に欠ける。米国の批評家たちも、テンポの遅さや後半の失速を批判する声が多い。それでも興行収入は1,000万ドルを記録し、その年のMGM作品ではトップを記録した。そして多くの人が指摘しているように、人間そっくりの殺人ロボットがしつこく追いかけてくる設定は、『ターミネーター』(84)の原型と言えるだろう。