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『インターステラー』を生んだ高度な物理学と、徹底したノーランの実写主義

『インターステラー』を生んだ高度な物理学と、徹底したノーランの実写主義


ミニチュアや実物大セットの活用



 ノーランは、リング状の宇宙船「エンデュランス」や、スペースシャトル型の「レインジャー」などを、昔ながらのミニチュア撮影で描くことに決めた。ノーランからの依頼を受けたのは、『ダークナイト』(08)のバットモービルも手掛けている米ニュー・ディール・スタジオである。同社は、1/15スケールのモーション・コントロール撮影用モデルと、1/5スケールの爆破シーン用モデルを制作した。


 「レインジャー」は、ほぼ実物大である7/8スケールのモデルも作られ、アイスランドのロケ地で俳優たちと一緒に撮影されている。ロケ終了後は、ロサンゼルスのソニー・ピクチャーズ・スタジオに持ち込まれ、フライトシミュレーターのような油圧式モーションベースに載せられて、外観シーンが撮影された。このモーションベースは、リアルタイムで手動操作可能になっており、ノーランが自ら動かしている。




 宇宙船の背景はノーランがマット合成を嫌ったため、フロント・プロジェクションで星空やブラックホールがスクリーンに投映された。この方法は、船内のコックピットの窓から見える風景の描写にも採用されている。フロント・プロジェクションやリア・プロジェクションを利用して窓外の風景を描く手法は、80年代ごろまで盛んに用いられていたが、ブルーバックやグリーンバックによる高精度なデジタルのマット合成が普及してからは、すっかり姿を消していた。


 だが、ジョセフ・コシンスキー監督が『オブリビオン』(13)で復活させて以降、様々な作品に採用されるようになっている。その理由は、高輝度・高解像度のデジタルプロジェクターが普及したことと、セットや衣装の素材が自由に選べるという点だ。ブルー(グリーン)バック合成の場合、背景と同色の箇所に穴が空いてしまう他、光沢のある材質は背景の色を拾ってしまうため、使えないという問題があった。だがプロジェクションなら、素材や色が自由になり、さらに監督や俳優が完成画面をイメージしやすいというのも大きなメリットで、今回はこの点が採用の主な理由となった。


 また、いかにもCG然としたシンプルな箱型ロボットであるTARSも、実物大パペットが作られ、その背後からパントマイムの経験を持つビル・アーウィンが操っていた。難易度が高かったのが、TARSがアメリア博士(アン・ハサウェイ)を抱きかかえて、海に覆われた「ミラー博士の星」の水面を高速移動する場面である。




 まずロケ地であるアイスランドのラグーン(潟湖)で、風車のように回転するTARSの仕掛けを施した4綸バイクを走らせる。次に同じ場所で、ハサウェイを抱きかかえて走るスタントマンと、代役を抱えたTARSの移動を撮影。そして両者から必要な映像をロトスコープ(手作業による切り出し/マスク切り)して、ハサウェイの位置や姿勢をデジタル修正。さらに水面や、水しぶきをCGで足して完成させるというものだった。


 このようにノーランは、CGを完全に嫌っているわけではなく、必要に応じて用いている。だがそれも、あくまで実写で撮ったものを、よりリアルな表現に昇華させるための手段の一つに過ぎない。まずは実写を最優先させるノーランの徹底したこだわりが、ここでも垣間見ることができる。




文:大口孝之 (おおぐち たかゆき)

1982年に日本初のCGプロダクションJCGLのディレクター。EXPO'90富士通パビリオンのIMAXドーム3D映像『ユニバース2~太陽の響~』のヘッドデザイナーなどを経てフリーの映像クリエーター。NHKスペシャル『生命・40億年はるかな旅』(94)でエミー賞受賞。最近作はNHK Eテレ『コングラ CGの教室』(18)の監修。VFX、CG、3D映画、アートアニメ、展示映像などを専門とする映像ジャーナリストでもあり、映画雑誌、劇場パンフ、WEBなどに多数寄稿。デジタルハリウッド大学客員教授の他、東京藝大大学院アニメーション専攻、日藝映画学科、日本電子専門学校などで非常勤講師。



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『インターステラー』

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