デヴィッド・フィンチャー作品まとめ(2011~2023)
9.『ドラゴン・タトゥーの女』(11)158分
(c) 2011 Columbia Pictures Industries, Inc. and Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.
スティーグ・ラーソンの世界的ベストセラー小説『ミレニアム』の映画化。すでに本国スウェーデン版があったにも関わらず、フィンチャーはハリウッドの面目にかけて、一回りも二回りもクオリティーを上回る作品にブラッシュアップ。
『007』シリーズとは180度異なり、頼りにならないジャーナリストを演じるダニエル・クレイグが可愛い。『デッドプール』(16)のティム・ミラーがクリエイティブ・ディレクターを務めた、不穏極まりないオープニング・タイトルにも注目。
もっと詳しく!: 『ドラゴン・タトゥーの女』女性が男性優位社会を打ち砕く、痛快なフェミニズム的寓話
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10.『ゴーン・ガール』(14)149分
(C)2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
結婚5年目に失踪した妻を捜す夫が、警察から妻殺害の疑いをかけられてしまうという、ギリアン・フリンによる同名小説を映画化したサイコスリラー。…と思いきや、その正体は全世界のカップル必見の「円満な結婚生活を営むための指南ムービー」。
フィンチャーの語りの技術は円熟の極みに達し、一部の隙もない作品に磨き上げている。13ポンドもの体重を増減させ、人形相手にセックスシーンを練習したという、ロザムンド・パイクの圧倒的演技に恐れおののくべし。
もっと詳しく!: 『ゴーン・ガール』円満な結婚生活を営むための指南ムービー(サイコ・サスペンス風味)※注!ネタバレ含みます。
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11.『Mank/マンク』(20)132分
NETFLIX
“現代の『市民ケーン』”ともいうべき『ソーシャル・ネットワーク』を世に放ったフィンチャーが、今度は本当に『市民ケーン』の内幕を描いたNetflixオリジナル映画。歴史的傑作を手がけた脚本家ハーマン・J・マンキーウィッツの視点を通して、天才オーソン・ウェルズとの対立、女優マリオン・デイヴィスとの密やかな友情、そして当時の政治背景が語られる。40年代風アメリカ映画のルックを完全に再現したモノクロ映像は、もはや匠の域。シナリオは、フィンチャーの亡き父親ジャックの手によるもの。
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『Mank/マンク』フィンチャー親子がハーマン・J・マンキウィッツに託したものとは?
12.『ザ・キラー』(23)119分
Netflix映画『ザ・キラー』11月10日(金)より独占配信
『殺しの分け前/ポイント・ブランク』(67)や『ジャッカルの日』(73)のような、60年代・70年代の犯罪映画の香りを濃厚に漂わせた、硬質なネオ・ノワール。実はデヴィッド・フィンチャーのプロフェッショナル論を実直に語った、お仕事映画でもある。脚本を務めたのは、『セブン』(95)以来およそ30年ぶりのタッグとなるアンドリュー・ケヴィン・ウォーカー。短い出演時間ながら強烈な印象を残す、ティルダ・スウィントンとマイケル・ファスベンダーの会話シーンは本作の白眉。
もっと詳しく!:『ザ・キラー』暗殺者を自分に重ね合わせた、フィンチャー流仕事論 ※注!ネタバレ含みます
Netflix映画『ザ・キラー』11月10日(金)より独占配信
『ハウス・オブ・カード 野望の階段』(13-18)や『マインドハンター』(17~)など、近年フィンチャーは映画とは距離を置いてNetflixオリジナルドラマに軸足を移している。『ゴーン・ガール』以来6年ぶりの新作映画『マンク』も、Netflix製作作品だ。処女作『エイリアン3』でスタジオとケンカしまくったフィンチャーにとって、作家主義を保証してくれるNetflixは、自分のクリエイティビティーを最大限発揮できる場所なのだろう。
これからも彼のパンクなクリエイティブ・ライフに要注目である。
文: 竹島ルイ
ヒットガールに蹴られたい、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」主宰。