特殊効果専門スタジオILM(インダストリアル・ライト&マジック)のアニメーターとしてキャリアをスタートさせた後、CM・MVの演出を経て、映画監督に転身。話題作、野心作、過激作を生み出し続けて来た“ハリウッドきってのパンク系映画作家"、デヴィッド・フィンチャー。
ワンシーンに100テイクを重ねる完璧主義者だとか、ピンクが大嫌いだとか、処女作で主演女優とモメただとか、彼にまつわる逸話には事欠かない。完璧主義がたたってか、30年以上のキャリアで監督作は12本だけと寡作。しかしその12本は、アメリカ映画の歴史の中でも一際まばゆい光を放っている。
観れば皆虜になる、素晴らしきフィンチャー・ワークスをご紹介しよう。
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デヴィッド・フィンチャー作品まとめ(1992~1997)
1.『エイリアン3』(92)114分 / 145分(完全版)
(c)Photofest / Getty Images
1作目をリドリー・スコット、2作目をジェームズ・キャメロンが手がけた偉大なるSFシリリーズ『エイリアン』。プレッシャーのかかる3作目を仰せつかったのが、当時マドンナやローリング・ストーンズのMVを手がけ、新世代の映像クリエイターとして注目されていたフィンチャーだった。
満を持しての劇場用映画デビューだったが、主演のシガニー・ウィーバーとはトラブルが絶えず、スタジオとは毎日ケンカばかり。やっと完成した映画も酷評の嵐で、意気消沈したフィンチャーは「もう一本映画を撮るぐらいなら、大腸ガンで死んだ方がマシだ!」というコメントを残す。宗教色の強い、ハードエッジなストーリーが今観ると新鮮。
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2.『セブン』(95)127分
Seven(c) 1995 New Line Productions, Inc. All rights reserved. (c) 2010 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
ミルトンの『失楽園』やダンテの『神曲』をヒントに、アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーが書き上げた超暗黒系シナリオを、映画恐怖症になっていたフィンチャーが重い腰を上げて映画化。
日本の名カメラマン宮川一夫が編み出した現像テクニック「銀残し」を駆使して、ダークな世界観にふさわしい、コントラストの強いビジュアルを創り出した。’90年代を代表するサイコ・サスペンスだが、フィンチャー曰く「人間が自制心を次第に失っていくホラー映画」。
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3.『ゲーム』(97)128分
(c) Photofest / Getty Images
人の気持ちを顧みない冷酷無比な大富豪が、ひょんなことから参加してしまった謎の“ゲーム”のために、命を狙われる羽目に陥るサスペンス。
セックス願望むき出しのイメージしかないマイケル・ダグラスがカタブツの富豪を演じ、札付きの不良のイメージしかないショーン・ペンがテンパリ気弱キャラを演じているのが、キャスティングの妙。実は、人生の意味を見失っていた男が次第にその価値を見出していくという、イニシエーションの物語でもある。
もっと詳しく!:『ゲーム』『セブン』を作ったデヴィッド・フィンチャーである重要な意味 ※注!ネタバレ含みます。