(c)和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会
『るろうに剣心』驚異のアクションで漫画実写化に革命を起こした、大人気シリーズ!
シリーズが担う「時代」というテーマ
ここまではアクション部分を中心に書き連ねてきたが、特に『るろうに剣心 最終章 The Final』『るろうに剣心 最終章 The Beginning』においては、ドラマ部分が大幅に強化され、「殺人者はいつ許されるのか?」という根源のテーマに踏み込んでいく。最後に、本シリーズが内包するドラマ面について考えていきたい。
『るろうに剣心 伝説の最期編』でちらりと描かれるのだが、剣心は幼少期に父母を亡くし、人買いに買われ、さらに野盗に襲われたところを比古に命を救われ、飛天御剣流の教えを受けた、という過去がある。そうした境遇があるため、幕末の動乱に心を痛めた剣心は、師匠である比古の元を飛び出し、高杉晋作(安藤政信)率いる奇兵隊に参加(これは『るろうに剣心 最終章 The Beginning』で描かれる)。そこで桂小五郎(高橋一生)に見いだされ、人斬りの道を歩むことになる。野盗の墓を作るほどに心優しい人物が、「誰もが安心して暮らせる新時代」を作りたい一心で暗殺者になっていく姿は、実に悲劇的だ。
さらに、巴という存在に出会ったことで初めて「普通の暮らし」を知り、このささやかな幸せを守ろうと決意した矢先、何の因果か彼女を斬殺する事態が発生してしまう。剣心の人生は、本人の意思とは関係ないところで動いてゆくのだ。つまり、「人斬り抜刀斎」という存在は、時代によって生み出されたものだということ。そしてその悲劇の中に、雪代巴・縁の姉弟がとらわれ、巴は許嫁を殺された復讐者に身をやつし、縁もまた姉を殺された復讐者になってしまう。負の連鎖がずっと続いてゆくのだ。
そしてまた、抜刀斎の後継者だった志々雄は明治政府に裏切られたことで、国盗り計画を開始する。彼もまた、時代によって運命を変えられた人物であり、『るろうに剣心 伝説の最期編』の「時代がお前を選んだだけだ」という悲痛な叫びが突き刺さる(これは、剣心の「人斬りの時代はもう終わったんだ」というセリフに呼応)。
このように、『るろうに剣心』シリーズでは、剣心・巴・縁・志々雄は“幕末の亡霊”として描かれている。では、彼らの苦しみを請け負い、成仏させる存在とは? それが、薫(武井咲)だ。『るろうに剣心 最終章 The Final』では、巴の日記を読んで彼女の想いを知り、縁の死闘を止めようと尽力し、巴が果たしきれなかった「狂気の鞘」になろうとしていく。幕末をほぼ知らない薫という「明治に生きる女性」が新時代へと剣心を誘っていく構成は、非常に美しい。本シリーズを通してヒロインである彼女が、最後の最後に大仕事を果たす流れになっているのだ。
同じように、弥彦(大西利空)や巻町操(土屋太鳳)が“時代の呪い”を壊して前へと進んでいく姿が、こうしたメッセージ性を拡張させていく(『るろうに剣心 最終章 The Final』での操の役割が繰り上がる展開など、非常に明確に“新時代の躍動”が描かれている)。そうしたものの果てに、剣心の「剣と心を賭してこの戦いの人生を完遂する」という“答え”が導き出されていくのだ。そして、それは師匠の比古から教えられた「生きようとする意志」の大切さや、巴が日記に書き記した「死なせてはならない」という意志にもつながっている。剣心を10年もの長きにわたり生きてきた佐藤健が語る「循環する物語」との言葉は、まさに本作の核を言い表しているだろう。
さらに実写映画版から、新作「るろうに剣心 明治剣客浪漫譚・北海道編」が連載開始するという流れも生まれた。原作漫画がアニメや映画を生み、映画から原作の“続き”が生まれる。ここもまた、「循環」といえるのではないか。そしてまた、日本映画史に残るシリーズとなった『るろうに剣心』は、新たな映画表現を開花させる礎にもなっていくはずだ。
思い出すだけで、あまりにも痛ましい出来事が続いたこの国の10年間。時代に翻弄され続けながらも、「この目に留まる人々を護る」ため戦い続けた剣心の姿に、多くの人々が勇気づけられてきたのではないか。「始まりの物語」である『るろうに剣心 最終章 The Beginning』も、「終わりの物語」である『るろうに剣心 最終章 The Final』も、最後は去ってゆく剣心の背中を映して終わる。次の時代を創っていくのは、護られ、救われた我々の役目なのだ。
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文:SYO
1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」「FRIDAYデジタル」「Fan's Voice」「映画.com」「シネマカフェ」「BRUTUS」「DVD&動画配信でーた」等に寄稿。Twitter「syocinema」